下知げち)” の例文
利益に眩み上を畏れず下知げちを犯したは不届というので蔦屋は身上半減で闕所、京伝は手錠五十日と云う大きな灸をすえられたのである。
戯作者 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
左右の老将や謀臣にはかることもしなかったし、それを通じて下知げちする法もとらずに、彼自身、こう唐突に号令を出したのであった。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何だか物騒な下知げちだが、めると聞いてよろこんだのは家来達だ。それぞれ手分けして、言いつけられた用に散らばって行く。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「それッ」という小田さんの下知げちとともに、私たちが店の先にかけだすと、既に小僧は、さっきの二人の刑事によって捕らえられておりました。
頭蓋骨の秘密 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
下知げちと共に笑止や仙台藩士、わが退屈旗本早乙女主水之介を飽くまでも隠密と疑い信じて、今ぞ重なる秘密と謎を割りながら、さッと競いかかりました。
「長らく滞在にもかかわらず下知げちおもむきききいれざる段は不届きである。金談は断るから、左様心得ろ」
安吾史譚:05 勝夢酔 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
「ではあらためて、唯今からわらわが忍城のあるじになります、この甲冑かっちゅうは下総守氏長さまのおきせかえでした、この甲冑をつけて命ずることは、下総守の下知げちと思ってもらいます」
日本婦道記:笄堀 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
然るを加藤小西ごとき大将なれば血気の勇のみにて、仕置しおき一様ならず、朝鮮の人民日本の下知げち法度を信ぜずして、山林へ逃げかくれ、安堵の思なく、朝鮮の三道荒野となって五穀なし。
碧蹄館の戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
はじめてボートの支度したく下知げちして、四、五の船客をまずボートに抱き乗せ、つぎに船員の、妻子のある者にも避難を命じ、自分は屈強のいのち知らずの若い船員五、六名と共に船に居残り
新ハムレット (新字新仮名) / 太宰治(著)
そして早速承知をして、家来の蟻に海まで運ぶやうに下知げちをいたしました。
小熊秀雄全集-14:童話集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
家宰阿賀妻の下知げちがあった。彼らはさッと一つところにかたまっていた。われらが殿をまもるのだ——と叫んでいた。固めるように身を寄せあった。彼らの身体の血がお互いに通い合うかと思われた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
鼻声で、まどをあけろ、まどを、そっちも、こっちもと、下知げちなさる。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
当然、こう下知げちして、城兵をまとめてみたが、山城に位置していながら、奇襲の敵は、自分たちより高い所にいるのだった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一同に下知げちしてバラバラバラッ! 庭へ跳び下りて追いかけようとする天童利根太郎を、造酒は、白刃を突き出してせいした。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
尊い恐ろしいお方でしたから、かして置くことは出来ぬというので、室町将軍のお下知げちの下に、ある大名が無慙むざんにも、お父様をお殺しなされました。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
下知げちするや否や、固めの小者もろども、一斉に得物を取りながら、ひしめき立って殺到して来たのを
光春は矢倉にのぼって、残り少ない左右の者に、なお下知げちしていた。そして自身も、鉄砲を構えて、狭間はざまから筒先下がりに敵兵を狙撃していた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この里には別嬶べっぴんもいる、一人ずつかかあにするがいい。ため込んだ金もある筈だ、洗いざらいふんだくってしまえ! まず行って下知げちを伝え、その足ですぐに裏手へ廻れ!
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それ掛れッ! と下知げちを下しながらも、満谷剣之助、内心うす気味わるく感じているところへ、その、十手をひらめかして打ちかかろうとしていた御用の勢の真中から、やにわに
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
と、徳川万太郎は女駕おんなかごのうちから、仲間ちゅうげんどもを下知げちして加勢に追いやったが、煙の如き盗児、風の如き日本左衛門が、いつまでそれを待っておりましょうや。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
陣屋から陣屋へ下知げちを伝える伝騎の勇ましい掛け声が、静寂しじまを破るばかりであった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と玄心斎の下知げちに、バラバラっと散って行く伊賀の若ざむらいども。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
久太郎秀政は、今ぞッと、ふたたび下知げちして、せてきた者へさかよせを喰わせた。この場合の勝敗は、心理的にも、実体的にも、結果をまたず明らかである。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
馬上から十四、五人の武士に、はげしく下知げちをしたふたりの武士、これなん、伊那丸いなまる幕下ばっかでも、荒武者あらむしゃ双龍そうりゅうといわれている加賀見忍剣かがみにんけん巽小文治たつみこぶんじのふたり。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「火を消せ。消火につとめろ、財物を私するな、逃げおくれた老幼は保護してやれ、宮門の焼けあとへ歩哨を配置せい!」と、将兵に下知げちして、少しも怠るところがなかった。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、下知げちした。とたんに、ドドドッと、銃弾のひびきがすさまじい音と煙の壁を作った。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それがし、これより城中に入って、親しく二夫人の御前にまみえ、事の次第をお告げして、ご承諾をうけて参るほどに、まず曹操から下知げちをくだして、麓の軍勢を、この上より三十里外に退かせ給え
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どう仰せられても、面目はございません」と、李成は沓を拾って捧げながら——「このうえは、再度の早飛脚はやびきゃくで朝廷のご急援を切に仰ぐこと。——次には、近くの各県に合力ごうりき下知げちせられること。 ...
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ですが、あの日、武庫川に待って、師直以下の眷属けんぞくを襲殺したのは、能憲よしのり下知げちではなく、さきに師直のために越後で殺された上杉、畠山の遺臣どもが、主の恨みをふくんで勝手にやったことだとか。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
下知げちなされて、幾ヵ所にも、焚火たきびかせ、さて
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『ともかく、大夫のお下知げちを待って』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
下知げちは、武府に伝えられた。
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、四辺あたり下知げちした。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、下知げちさせた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)