三島みしま)” の例文
ひとばかりにはかぎらない。靜岡しづをかでも、三島みしまでも、赤帽君あかばうくんのそれぞれは、みなものやさしく深切しんせつであつた。——おれいまをす。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
伊豆口の三島みしまには尊氏方の仁木義長の軍勢がみ入っていたので、箱根の西裾にしすそをたどって北条のさとへ落ちのび、小寺や民家にわかれてかくれ込んだのである。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たとえば富岳三十六景の三島みしまを見ても、なぜ富士の輪郭があのように鋸歯状きょしじょうになっていなければならないかは、これに並行した木の枝や雲の頭やがけを見れば合点される。
浮世絵の曲線 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
我々はついに三島みしままで引き返しました。そこで大仁おおひと行の汽車に乗り換えて、とうとう修善寺しゅぜんじへ行きました。兄さんには始めからこの温泉が大変気に入っていたようです。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
つやつゝみのしらべ、三味さみ音色ねいろことかゝぬ塲處ばしよも、まつりは別物べつものとりいちけては一ねんにぎはひぞかし、三島みしまさま小野照をのてるさま、お隣社となりづからけまじのきそこゝろをかしく
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
十年ぶりで三島みしま駅から大仁おおひと行きの汽車に乗り換えたのは、午後四時をすこし過ぎた頃であった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
年増女は私を、東海道の三島みしまにやるのだと言った。三島と聞いて母は急に憂鬱ゆううつな顔になった。
友達といっては生華の仲間の婦人数名が出入りするだけで、全く孤独な生活をしていたこと、今度の引越しは郷里の三島みしま在へ帰るのだと云っていたが、そこにどんな親戚があるのか
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
三島みしまじょうは先輩の家を出た。まだ雨が残っているような雨雲が空いちめんに流れている晩で、暗いうえに雨水を含んだ地べたがじくじくしていて、はねあがるようで早くは歩けなかった。
蟇の血 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
連てゆかねばならぬ近くて沼津ぬまづ三島みしまとほくて小田原大磯おほいそなり夫迄は行まいが太儀たいぎながら手前たちせい出してくれ骨はぬすまぬと云に雲助共聞て口々に何親方の事だからかういふ時にでもほねをらずば何時恩を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そこへ御一新ごいつしんが来、開化のこゑがかういふ山の中にも這入はひつて来るやうになつた。三島みしま県令が赴任するとたうとう小山の中腹を鑿開きりひらいて山形から上山を経て米沢よねざはの方へ通ずる大街道が出来た。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
三島みしまの町に入れば小川に菜を洗う女のさまもややなまめきて見ゆ。
旅の旅の旅 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
東海道とうかいどう三島みしま宿しゅく
丹那山の怪 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
それから熱海へ来て大湯おおゆの前の宿屋で四、五日滞在した後に、山駕籠やまかごを連ねて三島みしまへ越えた。
箱根熱海バス紀行 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)