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せきしよ
やがて、
合方もなしに、
此の
落人は、すぐ
横町の
有島家へ
入つた。たゞで
通す
關所ではないけれど、
下六同町内だから
大目に
見て
置く。
も
勤むる者の心得は萬事
斯の如し此事我々の
上にある時は
自然面倒なりとて
他人の物にても
錠前を
叩き
開よなど云事なしとも
云難し
假にも
錠前を破るは
關所を
こめつ
可笑しく
面白く
物がたりながら
沈みがちなる
主の
心根いぢらしくも
氣遣はしく
離れぬ
守りにこれも
一つの
關所なり
如何にしてか
越えらるべき
如何にしてか
遁るべきお
高髮とりあげず
化粧もせず
粧ひし
昔の
紅白粉は
出立なし夫より
鰍澤の御
關所へ掛るが
路順なり都て甲州は
二重の御關所あり土地は
御代官の支配ゆゑ御關所手形を願ふべきなれども
日數も掛るにより御關所をば
拔道を
越しての
肩縫あげ
可愛らしき
人品なりお
高さま
御覽なされ
老人なき
家の
埒のなさ
兄は
兄とて
男の
事家内のことはとんと
棄物私一人が
拍つも
舞ふもほんに
埃だらけで
御座いますと
笑ひて
誘ふ
座蒲團の
上おかまひ
遊ばすなと
沈み
聲にお
高うやむやの
胸の
關所たれに
打明けん
相手もなし
朋友の
誰れ
彼れ
睦まじきもあれどそれは
連て天下の御
關所を廻り
道せし事
不屆なりと
咎れば文藏夫婦は是を聞て
仰天なし兩手を地に突何卒御見
遁し下されよと詫けれ共
惡漢共は
勿々聞入ず大切なる御關所何と存じ
拔道を