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くわいらう
割つて
通つた
人間の
袖の
煽りに、よた/\と
皆左右に
散つた、
中には
廻廊に
倒れかゝつて、もぞ/\と
動くのもある。
天守の
礎の
土を
後脚で
踏んで、
前脚を
上へ
挙げて、
高く
棟を
抱くやうに
懸けたと
思ふと、
一階目の
廻廊めいた
板敷へ、ぬい、と
上つて
其の
外周囲をぐるりと
歩行いた。
藤の
花の
紫は、
眞晝の
色香朧にして、
白日、
夢に
見ゆる
麗人の
面影あり。
憧憬れつゝも
仰ぐものに、
其の
君の
通ふらむ、
高樓を
渡す
廻廊は、
燃立つ
躑躅の
空に
架りて、
宛然虹の
醉へるが
如し。
其時気に
懸つたのは、
祠の
前を
階から
廻廊の
下へ
懸けて、たゞ
三ツ
五ツではない、
七八ツ、それ/\
十ウにも
余る
物の
形が、
孰も
土器色の
法衣に、
黒い
色の
袈裟かけた、
恰も
空摸様のやうなのが