青草あをくさ)” の例文
「どれ、あのとほくのがゝ、わかるもんか何處どこだか」勘次かんじえたところだけがつくりとつた蚊燻かいぶしの青草あをくさそゝぎながら氣乘きのりのしないやうにいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
晴れ渡つた空の下に、流れる水の輝き、つゝみ青草あをくさ、その上につゞくさくらの花、種々さま/″\の旗がひらめく大学の艇庫ていこ、そのへんからおこる人々のさけび声、鉄砲のひゞき渡船わたしぶねから上下あがりおりする花見の人の混雑。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
中には活々いき/\青草あをくさえている古いくづれかけた屋根を見える。屋根は恰で波濤なみのやうに高くなツたり低くなツたりして際限さいげんも無く續いてゐた。日光の具合で、處々光ツて、そしてくろくなツてゐる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
める青草あをくさえむとしてみづかわいたのであつた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
どうかしてあまりにおくれるとから草刈籠くさかりかごさかしま脊負せおつて、あるけばざわ/\とやうに、おほきなかごなら雜木ざふきえだして黄昏たそがれにははこんで刈積かりつんだ青草あをくさちかかごおろす。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
青草あをくさなかぼつして毒蛇どくじや直接ちよくせつれようとするものは一にんもないけれど、とほくから土塊どくわいつたり、ぼうさきでつゝいたりいたづらにおこきばふるはせることは彼等かれらこのんでするところであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)