鋭敏えいびん)” の例文
ものゝかんかた非常ひじやう鋭敏えいびんで、はなみゝはだなどにれるものをするどることの出來できめづらしい文學者ぶんがくしやであつたことをせてゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
鋭敏えいびん作用はたらきをすることがある………たとへば何か待焦まちこがれてゐて、つい齒痒はがゆくなツて、ヂリ/″\してならぬと謂ツた風にさわぎ出す。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
百姓ひやくしやうすべてはかれこゝろ推測すゐそくするほど鋭敏えいびんつてなかつた。かれ自棄やけわざ繃帶ほうたいいて數日間すうじつかんぶら/\とあそんでた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
もう一度頭の中で手落ちはないかとたしかめ、それから金網越しに、奥の台の上に列立する真空管や、鋭敏えいびんな同調回路の部品や
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
感応の力にして鋭敏えいびんであるなら、いたるところありがたからざる場所はなく、見る人ごとにありがたからざる人はない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
やがて古手屋の遠助が、きょうは大根菜屁だいこんなっぺだといった。なんという鋭敏えいびん嗅覚きゅうかくだろう。たしかに春吉君は、けさ大根菜のはいったみそしるでたべてきたのである。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
周囲がこんな風だから、僕は益〻刺戟しげきされて遠い先の職業問題に鋭敏えいびんになる。お父さんにお客さんを取次ぐにも名刺の肩書に注目して、これは儲かる商売か知らんと思う。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
したみの板や柱にさまざまな落書きがしてあるのを一々見て行く内に、自分の感覚は非常に緊張きんちょうして細いのも墨の色のうすいのも一つも見のがすまいと、鋭敏えいびんに細心に見あるいた。
落穂 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
むしろ鋭敏えいびん過ぎて刺戟しげきに堪えるだけの精力がないから、ご覧のように消極的な月日を送る事になったのです。だから一旦いったん約束した以上、それを果たさないのは、大変いやな心持です。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わたしの、活発に鋭敏えいびんはたらおさな想像そうぞう好奇心こうきしんは、この一つのことにばかりはたらいた。
この島では、光と音と、そして電磁波でんじはとが、すこぶる鋭敏えいびんに検出されるようになっていた。——
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
いわゆる鋭敏えいびんにして頭脳の明晰めいせきなるものは、この事はこうなっているから、こんどはこういうことになろう、さてそうなればおれはここに処するにいかにせばよきかと案じ出す。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
そして、「何だツて俺の感情は、鋭敏えいびんなんだ、恰ではりねずみのやうさな。些とでも觸ツたらプリツとする………だから誰とも融和ゆうわすることが出來ないのよ。何故もそツとおツとりしない。」
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「ねえ、サム。恐龍は、鼻がきくだろうか。つまりにおいをかぎつけるのが鋭敏えいびんかな」
恐竜艇の冒険 (新字新仮名) / 海野十三(著)
隠し持ったるフォークとナイフを電光石化でんこうせっかと使いわけて、あやしげなる赤味をおびた肉の一片を、ぽいと博士の口に投げ入れるなれば、かねて燻製ものには嗅覚きゅうかく味覚みかく鋭敏えいびんなる博士のことなれば
「さあ、ルーズベルト君、ぐずぐずしていては、また鋭敏えいびんなる日本空軍に発見されるおそれあり。さあさあ次の砲弾を撃ちこむなり、それとも爆撃でも雷撃でも、何でもさっさと早くやったりやったり」