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醉
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よひ
なし
茶碗に
汲て
舌打鳴し呑ける程に
胸に一物ある寶澤は
酌など致し種々と
勸めける婆は
好物の酒なれば勸めに隨ひ
辭儀もせず呑ければ
漸次に
醉出て今は
正體無醉臥たり寶澤熟々
此體を
身に
引うけて
世話をすること
眞の
兄弟も
出來ぬ
業なり、これを
色眼鏡の
世の
人にはほろ
醉の
膝まくらに
耳の
垢でも
取らせる
處が
見ゆるやら、さりとは
學士さま
寃罪の
訴へどころもなし。
立ち上がつて自分の懷中を
搜つた東作、さすがに酒の
醉も覺めました。
「
何うかなすつたんですか」と
醉が
一時に
去つた
樣な
表情をした。
殘すべき此段は憑司が
訴への通りなり何故に汝が衣類に血のつきたるやと
詰れば傳吉は私し
昨夜畑村より
日暮て歸る時河原にて
物に
跌き
不審に存じ候が定めて酒に
醉し人の
寢て居ることゝ存じ
咎められては
面倒と
脇へ
寄て通り
拔しが
眞の
闇ゆゑ死人とは一
向存じ申さず今朝
衣類并びに庭の
敷石等へ血の
着居りしを