)” の例文
その後からお母様もいて来た。子供は二人とも額の広い、どちらかと云へば凸助の方である。お父様の様に眼が奥まつて、可愛らしい子ではない。
自分は蛇が見たいから、細い道をどこまでもいて行った。爺さんは時々「今になる」と云ったり、「蛇になる」と云ったりして歩いて行く。しまいには
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
鷺太郎は、一寸躊躇ためらったが、すぐ思いなおして、そのあとを気づかれないようにいて行った。
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
娘は阿難に寄り添うようにいて来る、目犍連は釈尊の姿が眼に入るや、ただちにその前に来て正しく立ち三拝する。阿難と娘は隔たった端に局竦うずくまり、首を地から上げ得ない。
阿難と呪術師の娘 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
と、吉宗は笑ったあとでこうけ加えました。そして、また義通の方へも等分に向って
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
余は谷村君のうしろいて事務室の裏へ出た。股野も食付くっついて出た。裏は真四角な庭になっている。無論も草も花も見当らない、ただの平たい場所である。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ゲンも尾を振りながら、穏和おとなしくいて来て、自分で小屋に這入ってしまった。
睡魔 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
(おれは、生きてゆくのがいいのか。死ぬのがほんとか。おれにも、分からなくなった。おれに、考えさせるひまも与えず、おれのあとから、たえずだれかがねらってくる。おれは、休みたい。……すこし、どこかで、息づきたい)
先刻さつき大晦日おほみそかよる景色けしきるつてつたのよ。隨分ずゐぶん御苦勞ごくらうさまね。このさむいのに」と御米およねあといて、きよおほきなこゑしてわらつた。やがて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あの山鹿のうちからけて来た、若い女が、てられたように、ぐったりと寝ている、いやそればかりでない、その左の胸の、こんもりとした隆起の下には、匕首あいくちが一本、ぐさりと突刺っているのだ。
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
け加えた。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
先刻さっき大晦日の夜の景色けしきを見て来るって出て行ったのよ。随分御苦労さまね。この寒いのに」と云う御米のあといて、清は大きな声を出して笑った。やがて
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
誠子は矢ッ張りいて来ようとはしなかったのだ。
火星の魔術師 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
そのれいになく元氣げんきよく格子かうしけて、すぐといきほひよく今日けふうだいと御米およねいた。御米およね何時いつものとほふく靴足袋くつたび一纏ひとまとめにして、六でふ這入はいあとからいて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
御米がいつもの通り服や靴足袋くつたび一纏ひとまとめにして、六畳へ這入はいあとからいて来て
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)