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辛酸
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しんさん
ふりがな文庫
“
辛酸
(
しんさん
)” の例文
今の
辛酸
(
しんさん
)
も、かくまで呪われた恋の不幸さも、忘れていた。——現実に恋人と会っているような
陶酔
(
とうすい
)
のなかに尺八を吹き
耽
(
ふけ
)
っていた。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この薄命な、しかしねばり強い人が、どれほどのこの世の
辛酸
(
しんさん
)
を経たあとで、今の静かな生活にはいったか、私もそうくわしいことを知らない。
分配
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
幼い頃から世の
辛酸
(
しんさん
)
を
嘗
(
な
)
めて来た人に特有の、
磊落
(
らいらく
)
のように見えながらも、その笑顔には、どこか卑屈な気弱い影のある、あの、はにかむような笑顔でもって
鉄面皮
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
さらに兄に
依嘱
(
いしょく
)
しえべくんば、我が小妹のために一顧を惜しまざれ。彼女は我が一家の
犠羊
(
ぎよう
)
なり。兄の知れるごとく今小樽にありてつぶさに
辛酸
(
しんさん
)
を
嘗
(
な
)
めつつあり。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
そして、身体を練り、知恵を磨く一方では、復讐事業の資金を貯蓄する為に、あらゆる
辛酸
(
しんさん
)
を
嘗
(
な
)
めた。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
▼ もっと見る
世の中の
辛酸
(
しんさん
)
も、道理も理解することの出来ぬ、公方というような、最大特権階級の
我儘者
(
わがままもの
)
の、愛憎が、どのように変化の
甚
(
はなは
)
だしいものであるかは説明を待たない。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
まだ三十四五であったが、世の中の
辛酸
(
しんさん
)
をなめつくして、その
圭角
(
けいかく
)
がなくなって、心持ちは四十近い人のようであった。養子としての淋しい心の
煩悶
(
はんもん
)
をも思いやった。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
私
(
わたくし
)
の
父
(
ちち
)
は
旗色
(
はたいろ
)
の
悪
(
わる
)
い
南朝方
(
なんちょうがた
)
のもので、
従
(
したが
)
って
私
(
わたくし
)
どもは
生前
(
せいぜん
)
に
随分
(
ずいぶん
)
数々
(
かずかず
)
の
苦労
(
くろう
)
辛酸
(
しんさん
)
を
嘗
(
な
)
めました……。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
衰えきった顔であった、つぶさに嘗めて来た世の
辛酸
(
しんさん
)
が、刻まれている
皺
(
しわ
)
の一つ一つに浸みこんでいるのであろう。けれどいますべては終った、もうどんな苦しみもない。
鼓くらべ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
それは刑事たちにとって、無理もない欲望だったし、それに二人が本庁を離れ、はるばるこの
横浜
(
はま
)
くんだりへ
入
(
い
)
りこんでからこっち、二人で
嘗
(
な
)
めあった数々の
辛酸
(
しんさん
)
が彼等を一層野心的にしていた。
疑問の金塊
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
数十頭のヤク牛が重い荷を負わされて雪解けの谿流を
徒渉
(
としょう
)
するのを見ていたら妙に悲しくなって来た。牛もクリーも探検隊の人々自身もなんのためにこの
辛酸
(
しんさん
)
を嘗めているかは知らないのである。
柿の種
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
瀑布を
上
(
のぼ
)
り
俯視
(
ふし
)
すれば
毛髪悚然
(
もうはつそくぜん
)
、
脚
(
あし
)
為
(
た
)
めに
戦慄
(
せんりつ
)
す、之を以て衆
敢
(
あへ
)
て来路を顧みるなし、然りと雖も先日来幾多の
辛酸
(
しんさん
)
と
幾多
(
いくた
)
の労苦とを
甞
(
な
)
めたる為め、此
険流
(
けんりう
)
を溯るも
皆
(
みな
)
甚労とせず、進程亦従て速なり
利根水源探検紀行
(新字旧仮名)
/
渡辺千吉郎
(著)
アルペン農の
辛酸
(
しんさん
)
に投げ
『春と修羅』
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
卯木の兄正成が、一族すべてをつれて立て
籠
(
こも
)
ったため、彼女も良人と共に籠城の
辛酸
(
しんさん
)
をなめ、清次はそこで
呱々
(
ここ
)
の声をあげたのである。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
たしかに、無上のものである。ダヴィンチは、ばかな一こくの
辛酸
(
しんさん
)
を
嘗
(
な
)
めて、ジョコンダを完成させたが、むざん、神品ではなかった。神と争った罰である。魔品が、できちゃった。
俗天使
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
さまざま、世の
辛酸
(
しんさん
)
に会われたようでも、もともと深宮のお育ち、真の世間、人間がおわかりというのではありません。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
甲賀でも、滝川姓の族は、みな
由緒
(
ゆいしょ
)
ある家すじだった。一益もその血系の子であった。鍛武の
習
(
まな
)
びはもとよりのこと、若年ずいぶん
辛酸
(
しんさん
)
もなめたらしい。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と共に、あらゆる
飢寒
(
きかん
)
や
辛酸
(
しんさん
)
との闘いも心ゆるんで、骨も肉も、筋も、いちどにばらばらに
解
(
ほぐ
)
れるかのような気もちになり、どたっと、そこへ坐ってしまった。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
だが、さいごに一言すれば、ぼくの青少年期は、何ともひどい
辛酸
(
しんさん
)
をなめて来たかのようだし、読者もそう読まれたか知らないが、ぼく自身は、ちっともそんな気はしていないのである。
忘れ残りの記:――四半自叙伝――
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ここ十年の余、光秀は、つぶさに世の
辛酸
(
しんさん
)
をなめて来た。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ただこういう
辛酸
(
しんさん
)
のなかにも
毅然
(
きぜん
)
として失わないものは
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“辛酸”の意味
《名詞》
辛酸(しんさん)
辛い苦しみ。また、そのような経験。
(出典:Wiktionary)
辛
常用漢字
中学
部首:⾟
7画
酸
常用漢字
小5
部首:⾣
14画
“辛”で始まる語句
辛
辛辣
辛抱
辛棒
辛苦
辛夷
辛気
辛子
辛防
辛々