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蹴返
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けかえ
ふりがな文庫
“
蹴返
(
けかえ
)” の例文
下島は
面色
(
かおいろ
)
が変った。「そうか。返れと云うなら返る。」こう言い放って立ちしなに、下島は自分の前に据えてあった膳を
蹴返
(
けかえ
)
した。
じいさんばあさん
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
飛
(
とん
)
でかかれば黄金丸も、
稜威
(
ものもの
)
しやと振り
払
(
はらっ
)
て、また
噬
(
か
)
み付くを
丁
(
ちょう
)
と
蹴返
(
けかえ
)
し、その
咽喉
(
のどぶえ
)
を
噬
(
かま
)
んとすれば、
彼方
(
あなた
)
も去る者身を沈めて、黄金丸の
股
(
もも
)
を噬む。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
しかし、
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
、うまく行った。荒木夫人は火のように怒って、鼻息を荒くしながら、
裾
(
すそ
)
を
蹴返
(
けかえ
)
して帰って行った。
少年・春
(新字新仮名)
/
竹久夢二
(著)
それが皆、口のまわりを人間の血にぬらして、前に変わらず彼の足もとへ、左右から襲いかかった。一頭の
頤
(
あご
)
を
蹴返
(
けかえ
)
すと、一頭が肩先へおどりかかる。
偸盗
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
今
卸
(
おろ
)
したかと思われるほどの
白足袋
(
しろたび
)
を張り切るばかりに細長い足に見せて、変り色の厚い
袘
(
ふき
)
の椽に引き擦るを軽く
蹴返
(
けかえ
)
しながら、
障子
(
しょうじ
)
をすうと開ける。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
「雑巾々々。」と宙に躍って、
蹴返
(
けかえ
)
す
裳
(
もすそ
)
に
刎
(
は
)
ねた脚は、ここに
魅
(
さ
)
した魔の
使
(
つかい
)
が、
鴨居
(
かもい
)
を抜けて出るように見えた。
第二菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
闇
(
あん
)
に知ッていたので、いわゆる虫が知ッていたので,——その
飄
(
ひるが
)
えるふりの
袂
(
たもと
)
、その
蹴返
(
けかえ
)
す
衣
(
きぬ
)
の
褄
(
つま
)
、そのたおやかな姿、その美しい貌、そのやさしい声が
初恋
(新字新仮名)
/
矢崎嵯峨の舎
(著)
立ち戻って、足で
蹴返
(
けかえ
)
してみると、ハンカチの中から、コロコロと
一箇
(
いっこ
)
の指環がころがり出した。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
寝て働くがいゝと思い、胸ぐらを取られながら、龜藏の油断を見て
前袋
(
まえぶくろ
)
に手がかゝるが早いか、孝助は自分の
体
(
からだ
)
を
仰向
(
あおむ
)
けにして寝ながら、右の足を上げて龜藏の
睾丸
(
きんたま
)
のあたりを
蹴返
(
けかえ
)
せば
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
その瞬間に火のような夫人のひとみと、皮肉に落ち付き払った葉子のひとみとが、ぱったり出っくわして小ぜり合いをしたが、また同時に
蹴返
(
けかえ
)
すように離れて事務長のほうに振り向けられた。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
せき立てるように言った声をきき流し乍ら、直人は、黙々と首を垂れて、カラリコロリと、足元の小石を
蹴返
(
けかえ
)
していたが、不意にまた、クスリと笑ったかと思うと、のっそり顔をあげて言った。
流行暗殺節
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
「小十郎、臆したか」虎之助が叫んだ、わっという呶声が神谷小十郎の口から発した、礫を
蹴返
(
けかえ
)
す音と、矢声とが、夜のしじまを破った、白々と
冴
(
さ
)
えた川原に影が走り、刃が空へ電光を飛ばした。
内蔵允留守
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
外を歩くと自分の踏む足の下から、熱に
冒
(
おか
)
された病人の
呼息
(
いき
)
のようなものが、
下駄
(
げた
)
の歯に
蹴返
(
けかえ
)
されるごとに、行く人の眼鼻口を悩ますべく、風のために吹き上げられる
気色
(
けしき
)
に見えた。
三山居士
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
突然
(
いきなり
)
おえいを担いで連れて
往
(
ゆ
)
こうとしますゆえ、多助は驚き、一生懸命小平の足にしがみ付き
盗賊々々
(
どろぼう/\
)
と云うのを、えゝ邪魔するなと
蹴返
(
けかえ
)
せば、多助は仰向けに倒れたが、又起上り取付けば
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
蟻
(
あり
)
の穴を
蹴返
(
けかえ
)
したごとくに散り散りに乱れて前面の傾斜を
攀
(
よ
)
じ登る。見渡す山腹は敵の敷いた鉄条網で足を
容
(
い
)
るる余地もない。ところを
梯子
(
はしご
)
を
担
(
にな
)
い
土嚢
(
どのう
)
を
背負
(
しょ
)
って
区々
(
まちまち
)
に通り抜ける。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
蹴
常用漢字
中学
部首:⾜
19画
返
常用漢字
小3
部首:⾡
7画
“蹴”で始まる語句
蹴
蹴出
蹴飛
蹴落
蹴上
蹴鞠
蹴散
蹴込
蹴立
蹴倒