足溜あしだま)” の例文
その問題の洲股すのまたというのは、尾濃びのうの国境で、美濃の攻略には、どうしてもこの辺の要害に、織田の足溜あしだまりが欲しいところなのである。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
せんと思ふ所にかくの如く住持ぢうぢなさけ深く教へてくれける故大いに悦び拜々有難う御座りますといひつゝ彼の位牌壇よりかべに有る足溜あしだまりへ足を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
正勝は思いがけぬ足溜あしだまりを得た。思いがけぬ世界を発見した。そして同時に、容易にそこで蔦代の死体を発見したのだった。彼はかえって呆気あっけに取られた。
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
自然に足溜あしだまりとなり村里なども起立したので、同じ碓氷の東麓にもある坂本の宿、古くは郷名にも存する坂梨(坂足の約)、さては馬返しという休茶屋のごとき
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
又「はゝア何でも此の頃頭髪あたまった比丘さんに違いない、毛の生えるまで足溜あしだまりに己のうちへ泊って居るのだ、彼奴あいつら二人が永禪和尚にお梅かも知れねえぜ、のう婆さん」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
俺、よっぽど草津から越後へ出ようと思ったが、よく考えてみると、熊谷くまがやざいに伯父が居るのだ、少しは、熊谷は危険かも知れねえが、故郷へかえる足溜あしだまりには持って来いだ。
入れ札 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「若い者の休み場の裏へ出ますよ。駄菓子屋の文吉の家を若い衆の足溜あしだまりにしたんで」
足溜あしだまりなくける機会はづみに手の物を取落して、一枚はづれし溝板のひまよりざらざらとこぼれ入れば、下は行水ゆくみづきたなき溝泥どぶどろなり、幾度いくたびのぞいては見たれどこれをば何として拾はれませう
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
軍事のはげしさ江戸に乗り込んで足溜あしだまりもせず、奥州おうしゅうまで直押ひたおしに推す程のいきおい
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「何時からつて、こゝは私の部屋なンですよ。富岡さんは、田舎の方にいらつして、東京に足溜あしだまりがないから、こゝでお泊りになるンだけど、私、その時は、階下でやすませて貰つてゐるンです……」
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
中心基地の本城から、予想される各戦線の主要地に、足溜あしだまりとして、あらかじめ守兵や糧食を入れておく飛び飛びの“点”でもある。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「若い者の休み場の裏へ出ますよ、駄菓子屋の文吉の家を若い衆の足溜あしだまりにしたんで」
足溜あしだまりなくける機會はづみもの取落とりおとして、一まいはづれし溝板どぶいたのひまよりざら/\とこぼれば、した行水ゆくみづきたなき溝泥どぶどろなり、幾度いくたびのぞいてはたれどれをばなんとしてひろはれませう
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此処なれば決して知れる気遣いは有るまい、てまえそりたて頭では青過ぎて目に立つから、少し毛の生えるまでは此処にいよう、只少し足溜あしだまりの手当さえすれば宜い、しかし此処には食い物が無いが
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「ならば、それももっけの倖せ。黄泥岡の東一里の辺に、白日鼠はくじつそとアダ名のある知り人がある。足溜あしだまりには、もってこいだし」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
日頃、晁蓋ちょうがいに目をかけられていた縁から、一味の足溜あしだまりとして、白日鼠の家が選ばれ、彼も一ト役買ってでたというわけ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いやいや。そこは一時の足溜あしだまり。石碣村せっかそんの浦から水を隔てた彼方かなたには、いかなる所があるかを思い出してごらんなさい」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれど、彼とは親戚の伊丹の白銀屋を、同志の足溜あしだまりの隠れ家とする便宜上べんぎじょう
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)