貴老あなた)” の例文
僕も至極しごく好機会だと思って研究会の方を貴老あなたからまとめて下さいとくれぐれも子爵に頼んで来たがこれさえ出来れば至極の名案でないか
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「私は却って、その顔も見ないから、ちっとも夢のように思われんでなお困る。幸ひ貴老あなたが見えてから、あの苦しむのが聞えないから……」
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
此の山三郎一にん不服でございますから、左様さよう粥河様とやらへ何うか仰しゃって下さるように願います、貴老あなた媒妁役なこうどやくで御迷惑でございましょうが、直ぐに引取りますから左様思召おぼしめして下さい
貴老あなたのようにいやしくも日本の華族といわれるお方が料理屋やホテルの料理に満足なさるようではとても我邦の料理法が進歩しません。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
それこそね、あの、貴老あなたが遊ばす、お狂言のわなにかかるために、私の身体からだを油でいためてでも差上げたいくらいに思うんですが……それはお察しなさいましよ。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
先ず貴老あなたのような有力者が発起人となって第一回を貴老のお屋敷で開くとしたらあのお客座敷を二室ふたま打抜ぶちぬいて二、三十人のお客は楽に出来ます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
どうして、私はまた、不意に貴老あなたが見えたのを、神の引合わせかと思う。ちょっと筋向うのが柳屋のだと、声をさえかけて下すったら、素通りにされても怨まない。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
明日といっては急だけれどもぐずぐずしていられないからそうしましょう。ネー貴老あなた、兄さんの言う通り今になってどうもこうもありはしない。お代を
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
それよりも土地とちて、ゆめともうつゝともわからない種々いろ/\ことのあるのは、べつではない、をんなのために、仕事しごとわすれたねむりさまして、つゝしんで貴老あなたをしへけさせやうとする
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
存じております。煩っておりませんと、もっと以前にどうにもしたいのでございますッて。ほんとうにお爺様、貴老あなたの御心労をお察し申して、母は蔭ながら泣いております。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お代が不似合ですと、何処どこが不似合です。ちょうど従兄弟同士ではあるしこれほどく似合った者はないでありませんか。それに何でしょう、貴老あなたも承知してお代の事を極めたのでありませんか。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
母とまた、お爺様、貴老あなたの事をそう申して……きっとおやしろにおいでなさるに違いない、内へお迎えをしたいんですけれど、ああ云った父の手前、留守ではなおさら不可いけません。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「あの窈窕ようちょうたるものとさしむかいで、野天で餡ものを突きつけるに至っては、刀の切尖きっさきへ饅頭を貫いて、食え!……といった信長以上の暴虐ぼうぎゃくです。貴老あなたも意気がさかんすぎるよ。」
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「もう一度夫人おくさま御執成おとりなし遊ばして、お許されまするよう、恐入りますが、貴老あなたから。」「まかり成らぬ。別に何を毀損こわしたというではなし、ただ御家風にあわぬじゃで、御詫おわびの仕様も無いさ。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
現在げんざいくるしみをるおうらすくはんために製作こしらへたんです。ありつたけの元気げんきした、ちからつくした。やうがない。しかし此処こゝ貴老あなたつたのはてん引合ひきあはせだらうとおもふ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
侍女一 まあ、貴老あなたは。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)