薩張さっぱ)” の例文
炭の中継場であろう。源次郎に聞くとシャンゴロだと教えた、何の事やら薩張さっぱり分らない、南日君が三五郎だと説明してれる。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
またパンの欠片かけら蜜柑みかんの皮といった食物まで運ばれていた——など、何が何やら、彼にとって薩張さっぱり訳の判らないことであった。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
腎臓病の青膨れのまま駈着かけつけて来た父親の乙束区長がオロオロしているマユミをつかまえて様子をいてみたが薩張さっぱり要領を得ない。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
父は祖母とはまるで違っていた。如何どうして此人の腹に此様こんな人がと怪しまれる程の好人物で、かお薩張さっぱり似ていなかった。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「解らん、薩張さっぱり見当も付かない、——俺は上った覚えもないし、たったと晩で、こんなに下手になる筈もない」
天才兄妹 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
母「お前さまのような薩張さっぱりした御気性だから口へはお出しなさらないが、腹のうちではさぞ御愁傷でございましょう」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
私はその時自分の考えている通りを直截ちょくせつに打ち明けてしまえば好かったかも知れません。しかし私にはもう狐疑こぎという薩張さっぱりしないかたまりがこびり付いていました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかし彼らはおたがいに心にためてあったものを、こういう機会に話し合ったことでかつてないほど顔の色もゆるみ、どこか、薩張さっぱりしたはればれしたところさえあった。
姫たちばな (新字新仮名) / 室生犀星(著)
彼の令嬢を付狙っていて殺された男、その加害者? の肥満ふとった男、その男に魔睡薬を用いて逃去ったあの令嬢と老婦人、そう考えてくると私には薩張さっぱり訳が分らなくなる。
日蔭の街 (新字新仮名) / 松本泰(著)
電車に乗っている人を見ると、歯をちゃんと磨いている人があまり多く見受けられない。頭髪かみを延ばしているのかいないのか、分けているのかいないのか薩張さっぱわからない人がいる。
独居雑感 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それでいて薩張さっぱりして活溌な書生さんでもあったろう。彼女はその客情人の若旦那や取巻き芸者と共にわたしをも引具して諸処で友だち芸妓の開いているお座敷へ遊びの他流試合に行く。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
三次郎 え、薩張さっぱりそんな話は聞きません。
中山七里 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
科学者には、何のことだか薩張さっぱりわからなかったが、数回反読する事によって、液体の沈降に及ぼす外力が泥鰌であることを了解し過ぎるほど了解した。
科学者と夜店商人 (新字新仮名) / 海野十三佐野昌一(著)
助七は長い間釣に余念も無かったが、とうとう尺許の岩魚を一尾釣り上げた。過日の洪水に流されて魚は薩張さっぱり居なくなったという。五時頃雨が降って来たが間もなくんだ。
黒部川を遡る (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
お前さんの云う事は何んだか薩張さっぱり分りませんが、男女なんにょとも此の儘何うも捨置く事は出来ません、御意見に背くようですが親父の前へ対しても打棄うっちゃっちゃア置かれませんから
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
薩張さっぱ理由わけが解らず、もしや王様から大層な急用でも仰せ付かったのではあるまいか。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
追ってパラメントヒルへ出掛けた事といい、私には何が何だか薩張さっぱ了解わかりません
P丘の殺人事件 (新字新仮名) / 松本泰(著)
今日は如何どうしたのか頭が重くて薩張さっぱり書けん。徒書むだがきでもしよう。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
その姿は、本当には薩張さっぱり見えないのだ。それにもかかわらず、見えない横丁に歩いている人間の姿が見えたような気がした。いや、矢張やはりハッキリと見えたのだ。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
コレラに成るのかと思ったと云うは、悪いお刺身の少しベトつくのを喰べたから、便所ちょうずばへ二度もきゃア大丈夫だと思ってると一日経つとサバ/\熱が取れて薩張さっぱなおって仕舞ったから
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
私にはこうしたスランプのって来るソモソモが薩張さっぱりわからないのです。書きたい事は山積していながら書けない。ペンを奪われて絶海の孤島に罪流されたような自烈度じれったさ。つまらなさ。淋しさ。
スランプ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しかし何がマズイのかは私にも薩張さっぱり見当はついていないのだ。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
何故なぜならば、僕が同伴して来た三人の将校達は、多分たぶん仏蘭西語フランスごと思われる外国語で話をしつづけました。こう不幸ふこうか、仏蘭西語は僕には何のことやら薩張さっぱり意味が判りません。
壊れたバリコン (新字新仮名) / 海野十三(著)
蚊の多いに蚊帳かやもなし、蚊燻かいぶしもなし、暗くって薩張さっぱり分りません。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
鳥渡ちょっと悪魔のような、また工場の隅から飛び出してきた職工のような恰好である。それほどアリアリとながめられる人の姿でありながら、一度元の肉眼にくがんにかえると、薩張さっぱり見えない。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
貴方は警視庁の調書まで読まれたそうですが、薩張さっぱり満足せられていないように見受けたと、尾形警部が言っていましたよ。尾形警部と言えば、赤耀館事件の取調主任であった人です。
赤耀館事件の真相 (新字新仮名) / 海野十三(著)