薄煙うすけむり)” の例文
つきのはじめにあきてば、あさ朝顏あさがほつゆはあれど、るゝともなき薄煙うすけむりのきめぐるもひでりかげほのほやまくろそびえて、やがあつさにくづるゝにも、熱砂ねつさみなぎつて大路おほぢはしる。
五月より (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
三年ばかりたつたのち、汽車は薄煙うすけむりを残しながら、九百八十六部の「夢みつつ」を北海道ほくかいだうへ運んで行つた。
詩集 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
南——いずれを眺めても、濛々もうもうたる薄煙うすけむりが、遥かに望まれておりまする
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……ひとみ水晶すゐしやうつたやうで、薄煙うすけむりしつとほして透通すきとほるばかり、つき射添さしそふ、とおもふと、むらさきも、萌黄もえぎも、そでいろ𤏋ぱつえて、姿すがた其處此處そここゝ燃立もえたは、ほのほみだるゝやうであつた。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
薄暗いうち振仰ふりあおいで見るばかりの、たけながき女のきぬ、低い天井から桂木のせなのぞいて、薄煙うすけむり立迷たちまよふ中に、一本ひともと女郎花おみなえし枯野かれのたたずんでさみしさう、しかなんとなく活々いきいきして、扱帯しごき一筋ひとすじまとうたら
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)