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蓊鬱
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おううつ
ふりがな文庫
“
蓊鬱
(
おううつ
)” の例文
月桂樹の老木が円天井を衝かんばかりに
蓊鬱
(
おううつ
)
とした葉を繁らせて、その翠緑の色を傍の青苔の蒸した浴池が水に浸しているのであった。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
昼見るといつも天主閣は、
蓊鬱
(
おううつ
)
とした松の間に
三層
(
さんぞう
)
の
白壁
(
しらかべ
)
を畳みながら、その
反
(
そ
)
り返った家根の空へ無数の
鴉
(
からす
)
をばら
撒
(
ま
)
いている。
疑惑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
沖合に出て、左手の
蓊鬱
(
おううつ
)
と繁茂している中ノ島の大樹と、右手に望まれる緑屋の二階座敷とを見くらべながら、奇妙な感慨に浸っていた。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
曾て「秩父の奥山」なる記事を書いた時、私は今日の秩父山が、渓流の
澄澈
(
ちょうてつ
)
と、森林の
蓊鬱
(
おううつ
)
と景趣の
幽邃
(
ゆうすい
)
とに於て、其権威の絶頂にあるものであると
曰
(
い
)
うた。
奥秩父の山旅日記
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
比叡山
(
ひえいざん
)
延暦寺
(
えんりやくじ
)
の、今、私の坐つてゐる宿院の二階の座敷の東の窓の机に
凭
(
よ
)
つて遠く眼を放つてゐると、老杉
蓊鬱
(
おううつ
)
たる尾峰の彼方に琵琶湖の水が古鏡の表の如く
湖光島影:琵琶湖めぐり
(旧字旧仮名)
/
近松秋江
(著)
▼ もっと見る
昨今三千円やそこらの金を無理算段して神社の設備大いに挙がると称する諸社を見るに、すでに神林の
蓊鬱
(
おううつ
)
たるなきゆえ、古えを忍ぶの神威を感ずのという念毛頭起こらず。
神社合祀に関する意見
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
沼は、
不忍
(
しのばず
)
の池を、その
半
(
なかば
)
にしたと思えば
可
(
い
)
い。ただ周囲に
蓊鬱
(
おううつ
)
として、樹が茂って暗い。
神鷺之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
振り返ると、おお何と
典麗
(
てんれい
)
な白帝城であろう。
蓊鬱
(
おううつ
)
たる、いつも目に親しんで来たあの例の丘陵の上の、何と
閑雅
(
かんが
)
な
甍
(
いらか
)
、白い
楼閣
(
ろうかく
)
、この
下手
(
しもて
)
から観るこの眺めこそは絶勝であろう。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
劫初
(
ごうしょ
)
以来人の足跡つかぬ白雲落日の山、千古斧入らぬ
蓊鬱
(
おううつ
)
の大森林、
広漠
(
こうばく
)
としてロシアの田園を
偲
(
しの
)
ばしむる大原野、魚族群って白く泡立つ無限の海、ああこの大陸的な未開の天地は
初めて見たる小樽
(新字新仮名)
/
石川啄木
(著)
もしそれ山花
野艸
(
やそう
)
に至りてはこれに異なり、その香
馥郁
(
ふくいく
)
としてその色
蓊鬱
(
おううつ
)
たり。隻弁単葉といへども皆
尽
(
ことごと
)
く霊活ならざるなし。自由の人におけるその貴ぶべきことけだしかくの如し。
『東洋自由新聞』第一号社説
(新字旧仮名)
/
中江兆民
(著)
南越餓鬼田圃あたりの樹草や種池棒小屋乗越辺の疎林さえなんと
蓊鬱
(
おううつ
)
をくわえたことか、またきくところによれば、高瀬奥では水電の導水路(?)のコンクリートがくさり、木管にかえたとか。
山岳浄土
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
蓊鬱
(
おううつ
)
たる森林や、どこともしれぬ森の奥にたまたまみつけた冷たい泉などが、どうして彼らにあれほどの意味を持ちうるのだろう? たとえば、その泉を見つけたのはもう一昨年のことなのだが
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
天地開闢以來
(
てんちかいびやくいらい
)
未
(
いま
)
だ
斧鉞
(
ふいつ
)
の
入
(
い
)
らざる
大森林
(
だいしんりん
)
、
到
(
いた
)
る
處
(
ところ
)
に
蓊鬱
(
おううつ
)
として
居
(
ゐ
)
る。
印度河
(
いんどかは
)
、
恒河
(
こうか
)
の
濁流
(
だくりう
)
は
澎洋
(
ほうやう
)
として
果
(
はて
)
も
知
(
し
)
らず、
此
(
この
)
偉大
(
ゐだい
)
なる
大自然
(
たいしぜん
)
の
内
(
うち
)
には、
何
(
なに
)
か
非常
(
ひぜう
)
に
恐
(
おそ
)
るべきものが
潛
(
ひそ
)
んで
居
(
ゐ
)
ると
考
(
かんが
)
へさせる。
妖怪研究
(旧字旧仮名)
/
伊東忠太
(著)
中には我等の
三囲
(
みかかえ
)
四囲
(
よかかえ
)
等
(
とう
)
の老樹多きに驚けり。山頂に登り、近くは斗満※別、遠くは阿寒山を眺め、近き
渓々
(
たにたに
)
は緑葉樹の
蓊鬱
(
おううつ
)
たるを望み、西に斗満の蓊鬱たるを望み、近き西には斗満川を眺めたり。
関牧塲創業記事
(新字新仮名)
/
関寛
(著)
幾つかの人家が
点綴
(
てんてい
)
する! 山と山との間、
蓊鬱
(
おううつ
)
たる林間には雪を被った高山が雲を
纏
(
まと
)
うて
聳
(
そび
)
え立ち、なんという大いなる展望であり、荘厳さであったろう。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
その上不思議な事にこの画家は、
蓊鬱
(
おううつ
)
たる草木を描きながら、
一刷毛
(
ひとはけ
)
も緑の色を使っていない。
蘆
(
あし
)
や
白楊
(
ポプラア
)
や
無花果
(
いちじゅく
)
を
彩
(
いろど
)
るものは、どこを見ても濁った
黄色
(
きいろ
)
である。
沼地
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
想うに今日の秩父は、渓流の
澄澈
(
ちょうてつ
)
と森林の
蓊鬱
(
おううつ
)
と景趣の
幽邃
(
ゆうすい
)
とに於て、其権威の絶頂にあるものである。
秩父の奥山
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
まことに
白帝城
(
はくていじょう
)
は老樹
蓊鬱
(
おううつ
)
たる丘陵の上に現れて
粉壁
(
ふんへき
)
鮮明である。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
街灯の影も疎らに
蓊鬱
(
おううつ
)
たる植込みを通して、青白い月のみが路上に淡い光を投げているのであった。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
蓊
部首:⾋
13画
鬱
常用漢字
中学
部首:⾿
29画
“蓊”で始まる語句
蓊欝
蓊乎
蓊
蓊匌
蓊然