すが)” の例文
前刻さつきすがさんにつたときわたしをりしもあかインキで校正かうせいをしてたが、組版くみはん一面いちめん何行なんぎやうかに、ヴエスビヤス、噴火山ふんくわざん文宇もんじがあつた。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
すがをスゲの外、スガと訓ますもんですから、それでガマズミの場合のスガに菅の字を借り用いたものに過ぎないであろう。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
と、一条行房も色をなして、座敷のすがむしろを上げ、床板をめくって、岩松吉致のからだを押しこむようにかくした。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
同僚は工場長の牧田まきたと工務部長の菱刈ひしかり、あとは、彼の下に会計と庶務を分担するすが老人と市田いちだ青年とである。職工は総員三十五名、三分の一が女であつた。
光は影を (新字新仮名) / 岸田国士(著)
富田屋八千代はすが画伯の良妻となり、一万円とよばれた赤坂春本の万竜も淑雅しゅくがな学士夫人となっている。
明治美人伝 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
山陽が遂に此年壬辰九月二十三日夕酉刻に歿し、越えて二十五日に綾小路千本通西へ入南側の光林寺に葬られた時の行列には、棺の左脇がすが三郎、右脇が此関五郎であつた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
一游亭いちいうていと鎌倉より帰る。久米くめ田中たなかすが成瀬なるせ武川むかはなど停車場へ見送りにきたる。一時ごろ新橋しんばし着。直ちに一游亭とタクシイをり、聖路加せいろか病院に入院中の遠藤古原草ゑんどうこげんさうを見舞ふ。
すがの根の永き一日ひとひいいもくはず知る人も来ずくらしかねつも
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
古くより今日に至るまでいずれの万葉学者も皆このすがの実をヤマスゲであると解し、そのヤマスゲはすなわち漢名麦門冬のヤマスゲを指したものである。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
今年ことし二月三日にぐわつみつか點燈頃てんとうごろ、やゝまへに、文藝春秋ぶんげいしゆんじうことについて、……齋藤さいとうさんと、すがさんの時々とき/″\えるのが、そのすがさんであつた。小稿せうかうことである。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
は、四間ほどあるが、荒壁にすがむしろを敷いたのみで、風雨にそなえ、しとみ遣戸やりどがあるだけのもの。世捨て人の庵でも、もすこし何かしらの風雅はある。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すがの根の長き春日はるひいたずらに暮らさん人は猿にかもおとる
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
すなわちこの様に解釈してこそこの歌、すなわち、「いもすがりにきし山路やまぢどひくらしつ」
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
聞いて安心したように、すが六之丞が秀吉の部屋へ行った。ここは一昨年焼けた坂本城を改築して出来た仮城で、松原越しに、潮が見え、裏窓から叡山の山桜がかすんで見えた。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
六郎谷ろくろうだにの下を、すがはらの登りへ向っておりまする」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)