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莟
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つぼ
ふりがな文庫
“
莟
(
つぼ
)” の例文
帯腰のしなやかさ、着流しはなおなよなよして、
目許
(
めもと
)
がほんのりと
睫毛
(
まつげ
)
濃く、
莟
(
つぼ
)
める紅梅の唇が、
艶々
(
つやつや
)
と、
静
(
しずか
)
な
鬢
(
びん
)
の蔭にちらりと咲く。
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
莟
(
つぼ
)
みと
思
(
おも
)
ひし
梢
(
こずゑ
)
の
花
(
はな
)
も
春雨
(
しゆんう
)
一
夜
(
や
)
だしぬけにこれはこれはと
驚
(
おどろ
)
かるヽ
物
(
もの
)
なり、
時機
(
とき
)
といふものヽ
可笑
(
をか
)
しさにはお
園
(
その
)
の
少
(
ちい
)
さき
胸
(
むね
)
に
何
(
なに
)
を
感
(
かん
)
ぜしか
経つくゑ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
毎日
夥
(
おびただ
)
しい花が咲いては落ちる。この花は昼間はみんな
莟
(
つぼ
)
んでいる。それが小さな、可愛らしい、夏夜の
妖精
(
フェアリー
)
の
握
(
にぎ
)
り
拳
(
こぶし
)
とでも云った恰好をしている。
烏瓜の花と蛾
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
伊太利
(
イタリー
)
唯一の天才と呼ばれた山岳画家ジョヴァンニ・セガンチーニが、夏の初めアルプス山の雪中で、
莟
(
つぼ
)
める薔薇を発見して「
薔薇の葉
(
エ・ローズ・リーフ
)
」という名画を描いた
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
「まあいや!」美しき
眉
(
まゆ
)
はひそめど、裏切る
微笑
(
えみ
)
は
薔薇
(
ばら
)
の
莟
(
つぼ
)
めるごとき唇に流れぬ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
▼ もっと見る
それにしても、今、彼の目の前にあるところのこの花の木の見すぼらしさよ! 彼は、
曾
(
かつ
)
て、非常に温い
日向
(
ひなた
)
にあつた為めに寒中に
莟
(
つぼ
)
んだところの薔薇を、故郷の家の庭で見た事もあつた。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
人に依りてはツボはその花が
莟
(
つぼ
)
める形ちで、
宛
(
あた
)
かも壺に似ているからツボスミレだと解いていれど、私は既に往時のある識者が言っている様にこれは庭に生えているスミレの意であると思う。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
遊びはもともと輪を作って開いたり
莟
(
つぼ
)
んだり、立ったり
屈
(
かが
)
んだりするのが
眼目
(
がんもく
)
であった。そうして歌は、またその動作と、完全に
間拍子
(
まびょうし
)
があっている。作者がほかにあったろうと思われぬのである。
こども風土記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
早春の風ひようひようと吹きにけりかちかちに
莟
(
つぼ
)
む桜
並木
(
なみき
)
を
桜
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
其人口を
莟
(
つぼ
)
めて言無かりきとて笑はれける。
遺訓
(旧字旧仮名)
/
西郷隆盛
(著)
そのうら
若
(
わか
)
き
莟
(
つぼ
)
みこそ
白羊宮
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
、
薄田淳介
(著)
……手にも
掬
(
むす
)
ばず、茶碗にも
後
(
おく
)
れて、浸して吸ったかと思うばかり、白地の手拭の端を、
莟
(
つぼ
)
むようにちょっと
啣
(
くわ
)
えて
悄
(
しお
)
れた。
瓜の涙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そのときは、富士山が、怖ろしく大きく見えたが、見ているうちに、細くなって
莟
(
つぼ
)
んでしまった。
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
晃然と霜柱のごとく光って、銃には殺気紫に、
莟
(
つぼ
)
める青い
竜胆
(
りんどう
)
の
装
(
よそおい
)
を凝らした。筆者は、これを記すのに張合がない。
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
未だ
芽組
(
めぐ
)
んだばかりというところで、樺の青味を除けば、谷一面、褐色と白色とに支配せられている、谷は
莟
(
つぼ
)
んでいる故か、思ったより暖かなので、中岳と仮に名をつけた小隆起を屏風にして
槍ヶ岳第三回登山
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
「胸がせまって、ただ胸がせまって——お爺様、
貴老
(
あなた
)
がおいとしゅうてなりません。しっかり抱いて上げたいわねえ。」と
夜半
(
よなか
)
に
莟
(
つぼ
)
む、この一輪の赤い花、露を
傷
(
いた
)
んで
萎
(
しお
)
れたのである。
白金之絵図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
天鵞絨
(
ビロード
)
のように、手障りの柔らかな青い葉が、互い違いになって、柱のような茎を取りまいて居る、此柱の頭から、
莟
(
つぼ
)
みが花傘なりに
簇
(
むら
)
がって、
蛹虫
(
さなぎむし
)
の甲羅のように、小さく青く円くなっている。
菜の花
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
柳はほんのりと
萌
(
も
)
え、花はふっくりと
莟
(
つぼ
)
んだ、昨日今日、緑、
紅
(
くれない
)
、霞の紫、春のまさに
闌
(
たけなわ
)
ならんとする気を
籠
(
こ
)
めて、色の濃く、力の強いほど、
五月雨
(
さみだれ
)
か何ぞのような雨の
灰汁
(
あく
)
に包まれては
売色鴨南蛮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“莟(
蕾
)”の解説
蕾(つぼみ、莟)とは、まだ開いていない状態の花のことである。転じて、前途有望な若者をいうこともある。
(出典:Wikipedia)
莟
漢検1級
部首:⾋
10画