草薙くさなぎ)” の例文
師の甥でもあり同門の友でもある草薙くさなぎ天鬼という者と、どこかで落ち合おうというために、この旅行をつづけているものと見られる。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それ以来そのところを焼津やいずと呼びました。それから、みことが草をお切りはらいになった御剣みつるぎ草薙くさなぎつるぎと申しあげるようになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
ここにそのぎし八尺やさか勾璁まがたま、鏡、また草薙くさなぎの劒、また常世とこよの思金の神、手力男たぢからをの神、天の石門別いはとわけの神を副へ賜ひてりたまはくは
草薙くさなぎつるぎ景行天皇けいこうてんのう御時おんとき東夷とうい多くそむきて国々騒がしかりければ、天皇、日本武尊やまとたけるのみことつかわして之を討たしめ給う。みこと駿河するがの国に到りし時……
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それから山を越えて雄勝おかち郡の西馬音内にしもないに遊び、次の月には柳田村の草薙くさなぎ氏の家で、引留められて冬を過ごすことになった。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
那方あなたに此方なる賤機山しづはたやまを心指て行手は名に負駿河の府中午刻まひるも過て巴河ともえがはおとにぞ知るゝ濱續はまつゞき清水久能くのうは右の方は左にとりて富士見山しげる夏野の草薙くさなぎの宮を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
草薙くさなぎつるぎは能く見ゆる野火を薙ぎ尽したりといへども、見えざる銃鎗は、よもや薙ぎ尽せまじ。
人生に相渉るとは何の謂ぞ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
と、名馬草薙くさなぎの足もそこよりはすすみえずに、手綱たづなをむなしくして、馬上にぼうぜんと考えこんでしまっていると、そこへ飛んできた早足はやあし燕作えんさく
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
草薙くさなぎたちを賜ひ、また御嚢みふくろを賜ひて、「もしとみの事あらば、このふくろの口を解きたまへ」と詔りたまひき。
命はお行きがけにお約束をなすったとおり、美夜受媛みやずひめのおうちへおとまりになりました。そして草薙くさなぎ宝剣ほうけんひめにおあずけになって近江おうみ伊吹山いぶきやまの、山の神を征伐せいばつにおいでになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
出す事能はざるなり故に三代將軍家光公武運長久をいのる爲と奏聞有て草薙くさなぎ寶劔はうけん降借かうしやくせられ其後返上なく東叡山に納たりそれたからは一所に在ては寶成ず故に慈眼大師の御遷座ごせんざと唱へ毎月晦日つごもりに三十六院を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
まぎれもない佐々木小次郎を眼の前に見直すと、源八は、かえって、不審のもやにつつまれてしまった。この人と自分の主人草薙くさなぎ天鬼とは同門の間がらである。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この時にさきあめ石戸いわとの前で天照らす大神をお迎えした大きな勾玉まがたま、鏡また草薙くさなぎの劒、及びオモヒガネの神・タヂカラヲの神・アメノイハトワケの神をおえになつて仰せになるには
「てまえは、上州下仁田しもにたの、草薙くさなぎ家の家来でござる。草薙家の亡主天鬼様は、鐘巻かねまき自斎先生の甥御おいごでござった。——で、小次郎どのとは、御幼少から存じておるので」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こは草薙くさなぎの大刀一二なり。
わーッと、いう声におくられて、正面の城戸を走りだした白馬はくば草薙くさなぎと、天下無類てんかむるい早足はやあし持主もちぬし、もう、御岳の広前ひろまえからッさかさまに、その姿すがたを見えなくしてしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「——あっ? これは旦那様の印籠だ、伏見城の工事場でむごい死に方をなされた草薙くさなぎ天鬼様が持っていた品。……これこの通り、天鬼と、印籠の底に小さく彫ってある」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なんと毛なみのうるわしい馬だろうと——それにはなみいるものが、ちょッと気をうばわれたが、よく見ると、名馬のはずだ、これは御岳みたけ神社の御厩みうまやわれてある「草薙くさなぎ」とよぶ神馬しんめである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)