色好いろごの)” の例文
ういへば沢山たんと古い昔ではない、此の国の歴々れきれきが、此処ここ鷹狩たかがりをして帰りがけ、秋草あきぐさの中に立つて居たなまめかしい婦人おんなの、あまりの美しさに、かねての色好いろごの
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
をとこをんな法師はふしわらは容貌かほよきがきぞとは色好いろごのみのことなりけん杉原すぎはららうばるゝひとおもざしきよらかに擧止優雅けにくからずたがても美男びなんぞとゆればこそは
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
これが古い物語の中から、わたしの前に浮んで来た「あめした色好いろごのみ」たひら貞文さだぶみの似顔である。
好色 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
嫉妬半分やきはんぶんである。「あなたが色好いろごのみで変な気を起すからこんなことになるんですよ」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
此の……県に成上なりあがりの豪族、色好いろごのみの男爵で、面構つらがまえ風采ふうつき巨頭公あたまでっかちようたのが、劇興行しばいこうぎょうのはじめからに手を貸さないで紫玉を贔屓ひいきした、既に昨夜ゆうべ或処あるところ一所いっしょに成る約束があつた。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
宇治拾遺物語うぢしふゐものがたりによれば、藤大納言忠家とうだいなごんただいへも、「いまだ殿上人てんじやうびとにおはしける時、びびしき色好いろごのみなりける女房にようぼうともの云ひて、夜更よふくるほどに月は昼よりもあかかりけるに」たへねてひき寄せたら
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
しかもうまれつきの色好いろごのみ、ことまたわかいのがすきぢやで、なに御坊ごぼうにいうたであらうが、それまこととしたところで、やがかれると出来できる、みゝうごく、あしがのびる、たちまかたちへんずるばかりぢや。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
附記 盛衰記に現れた俊寛は、機智に富んだ思想家であり、つるまへを愛する色好いろごのみである。僕は特にこの点では、盛衰記の記事に忠実だつた。又俊寛の歌なるものは、康頼やすより成経なりつねよりつたないやうである。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)