脅迫きょうはく)” の例文
竜之助から脅迫きょうはくされて与八が出て行くと、まもなく万年橋の上から提灯ちょうちんが一つ、ともえのように舞って谷底に落ちてゆく。
怠惰たいだの一団が勉強家を脅迫きょうはくして答案の回送を負担せしめる。もし応じなければ鉄拳てっけんが頭にあまくだりする。大抵たいてい学課に勉強な者は腕力が弱くなまけ者は強い。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
今もこうして、バラオバラコという怪人物から、脅迫きょうはくをうけている身だ。今夜から、自分は、またどんな暗い道をたどらなければならないか知れないのだ。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「でなければ、何うすると云うのです。あはゝゝゝゝゝ。貴君あなたは、この荘田を脅迫きょうはくするのですな。こりゃ面白い! 中止しなければ、何うすると云うのです。」
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
ストライキ、とりわけ学校ストライキは、何といっても学校に対する脅迫きょうはくであり、一種の暴力である。
次郎物語:04 第四部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「さよう……その幻影は要するに、実松氏固有の脅迫きょうはく観念が生んだ、ある恐ろしいものの姿だったに違いありません。鳥だか、けものだか、何だかわかりませんが……」
復讐 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
つめたいかぜは、おびやかすように、電燈でんとうおもてをなでていきました。心臓しんぞう規則正きそくただしく、生物せいぶつむねっているあいだに、いろいろなおそろしい脅迫きょうはく肉体にくたいおそうようなものです。
如何なる者にも汲取りを依頼することが出来ない、割引しなければ別の者に頼むという言葉を以て我々を脅迫きょうはくすることは出来ない、考えれば汲取料金は月一円でも安い位である
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
脅迫きょうはく威嚇いかく、暗殺、一揆いっき、暴動、クーデターなどから、総罷業そうひぎょう、サボタージュ、集団示威に至るまで、いろいろの手段があり、これらが極限までゆくと、内乱、革命、戦争ということになる。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
何者の悪戯いたずらか、それとも真の脅迫きょうはくか。おだやかならぬり紙がしてあるという。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
京子は幻覚や妄想に付き纏われる脅迫きょうはく観念のために、加奈子の身辺を離れようとしない。加奈子は、悲しみ、恐れ、甘え纏わる京子と一緒に、自分もまた引き入れられるような不安と憂鬱に陥る。
春:――二つの連作―― (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ゴロツクは脅迫きょうはくの意味そうな。乳呑子ちのみご連れたメノコが来て居ると云うので、二人と入れ代りに来てもらう。眼に凄味すごみがあるばかり、れい刺青いれずみもして居らず、毛繻子けじゅすえりがかゝった滝縞たきじま綿入わたいれなぞ着て居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
それからしばらく、チャンウーと猫女の押問答おしもんどうをする声がつづいていたが、やがて、猫女のピストルに脅迫きょうはくされて、チャンウーは奥の一間へ入っていった。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
如何なる者にも汲取りを依頼することが出来ない、割引きしなければ別の者に頼むという言葉を以て、我々を脅迫きょうはくすることは出来ない、考えれば汲取料金は月一円でも安い位である
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
何ですって……? ……あの支那人を僕の脅迫きょうはく観念が生んだ妄想だって云うんですか……? ……そ……そんな事があるもんですか。チャンとした事実だから云うんです。ね。御覧なさい。
狂人は笑う (新字新仮名) / 夢野久作(著)
躑躅つつじさきの古屋敷で、酒乱の神尾主膳に脅迫きょうはくされた時、伯耆ほうき安綱やすつなの名刀を抜いて迫りきたる神尾主膳、それを逃れて走り下りた二階の階段、そこには善悪邪正いずれとも判別しかねる人がいた。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
彼奴あいつは私達の深夜の室をひそかにうかがって暗黒の中にあの赤外線映画をとってしまったんです。深山はそれをもって可憐かれんなる子爵夫人を幾度となく脅迫きょうはくしました。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ポクポク進んで行くと、行手に数個の人影があって、ぐるりと輪形わがたに突っ立ち、中に一人の人を囲んで棒を持ったり杖を持ったり、そして盛んに啖呵たんかを切って中なる人を脅迫きょうはくしている様子です。
私の考えでは人間が脅迫きょうはくの観念に襲われる場合に其の対象となるものは、平常其の人間がついうっかり忘れていたとか、気をつけていなかったものに偶然注意が向けられた結果
三角形の恐怖 (新字新仮名) / 海野十三(著)
人の弱味よわみを見るに上手じょうずなこの群集動物は、相手を見くびると脅迫きょうはくする、かなわない時は味方みかたを呼ぶ、味方はこの山々谷々から呼応して来るのですから、初めて通る人は全くおどかされてしまいます。
「それは脅迫きょうはくだ。恫喝だ」
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)