細路ほそみち)” の例文
「さよならと云いたかったのでしょう。本当にさよならさよなら。暗い細路ほそみちを通って向うへ行ったらわたしの胃袋にどうかよろしく云って下さいな。」
蜘蛛となめくじと狸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
あとからギシ/″\やって参りまするから、細路ほそみちゆえ二人がける、人足がよろけるとたんに丈助の持って居た蒔絵のしてあるふくべへ、長持の棒ばなが当りましたから堪りません
早々に引上げた私は、その帰り道、あの崖の細路ほそみちの中ほどで、一人の女と行き違った。
腐った蜉蝣 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
そうかとおもうと、さびしい細路ほそみちを、二人ふたりまちほういそいでいることもありました。
けしの圃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ぬしあるものですが、)とでもささやいて居るやうで、頼母たのもしいにつけても、髑髏しゃれこうべの形をした石塊いしころでもないか、今にも馬のつらが出はしないかと、宝のつるでも手繰たぐる気で、茅萱ちがやの中の細路ほそみち
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
畔柳の住居すまひを限として、それよりさきは道あれども、まらうどの足をるべくもあらず、納屋、物干場、井戸端などの透きて見ゆる疎垣まだらがき此方こなたに、かしの実のおびただしこぼれて、片側かたわきに下水を流せる細路ほそみちを鶏の遊び
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
その細路ほそみちへおきなぐさ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
石垣の上に細路ほそみち
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
いづれ美人びじんにはえんなき衆生しゆじやうそれうれしく、外廓そとぐるわみぎに、やがてちひさき鳥居とりゐくゞれば、まる石垣いしがききふたかく、したたちまほりふかく、みづはやゝれたりといへども、枯蘆かれあしかやたぐひ細路ほそみちをかけて、しもよろ
城の石垣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)