素絹そけん)” の例文
「おや?」と、趙子龍が振り向いてみると、雪のような素絹そけんをまとった美人が楚々と入ってきて
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
左の方よりは足助あすけの二郎重景とて、小松殿恩顧のさむらひなるが、維盛卿よりわかきこと二歳にて、今年まさ二十はたち壯年わかもの、上下同じ素絹そけんの水干の下に燃ゆるが如き緋の下袍したぎを見せ
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
よ、朝凪あさなぎうらなぎさいさぎよ素絹そけんきて、山姫やまひめきたゑがくをところ——えだすきたるやなぎなかより、まつつたこずゑより、いだ秀嶽しうがく第一峯だいいつぽう山颪やまおろしさときたれば、色鳥いろどりれてたきわたる。
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
匂やかな若衆すがたは、今、まるで生きているその人のように、生彩奕々えきえきとして素絹そけんの上にほほえみつつ、その日の思い出を永劫とわに生かそうとてか、片手にかざした白つつじの花ひと枝——
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
此時天一坊の裝束しやうぞくには鼠琥珀ねずみこはく紅裏付こううらつきたる袷小袖あはせこそでの下には白無垢しろむくかさねて山吹色やまぶきいろ素絹そけんちやく紫斜子むらさきなゝこ指貫さしぬき蜀紅錦しよくこうにしき袈裟けさを掛け金作こがねづく鳥頭とりがしらの太刀をたいし手には金地の中啓ちうけいにぎ爪折傘つまをりがさ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
六十に近い信西入道も我にもあらで素絹そけんの襟をかき合わせた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
すると、泉石せんせき見事な庭苑ていえんの彼方で、すらと、鶴のような姿の人が立ってこなたを振向いた。髪に紫紐金鳳しじゅうきんぽう兜巾ときんをむすび、すそ長い素絹そけんの衣をちゃくし、どこか高士こうしの風がある。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大江の水は、素絹そけんを引いたように、月光にかすんでいた。——南は遠く呉の柴桑山さいそうざんから樊山はんざんをのぞみ、北に烏林うりんの峰、西の夏口かこうの入江までが、杯の中にあるような心地だった。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
嵌玉かんぎょくのかぶと、磨銀まぎんのよろい、花の枝をい出した素絹そけん戦袍せんぽうすずやかに
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)