箕輪みのわ)” の例文
その代りか、もしくは前からもあったか、関東などでは寄居よりいといい根小屋ねごやと言い箕輪みのわというのが、ともに城下の民のことであった。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
こんどのいくさも、大きくなりそうですぜ。さしもの武田勢も、信州武州までは、一捲きにして来たが、上州箕輪みのわの城が落ちない。
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
或日箕輪みのわの内儀は思も懸けず訪来とひきたりぬ。その娘のお俊と宮とは学校朋輩ほうばいにて常に往来ゆききしたりけれども、いまうちと家との交際はあらざるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
實を申せば……(摺寄つて聲をひくめ。)花魁は先月の晦日みそかに店をかけ出して、箕輪みのわ御乳母おんばさんのところへ……。
箕輪の心中 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
おなじ年の冬のはじめから武田晴信は上野こうずけのくにへ馬を入れ、しきりに諸方の城を攻めたが、明くる年の二月、国峰くにみねの城をやぶって箕輪みのわへと取り詰めた。
一人ならじ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
(略)おくま泣々なく/\箕輪みのわの無縁寺に葬むり、小万はお梅を遣ツては、七日/\の香華を手向けさせた。
里の今昔 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
あてもねえのに、毎日研物の荷を担いで、廓内をぶらついて、帰りにゃあ箕輪みのわの浄閑寺へ廻って、以前御贔屓ごひいきになりましたと、遊女おいらんの無縁の塔婆に挨拶あいさつをして来やあがる。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お熊は泣く泣く箕輪みのわの無縁寺に葬むり、小万はお梅をやっては、七日七日の香華こうげ手向たむけさせた。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
矢上やがみしかり、高田たかたしかり、子母口しぼぐちしかり、駒岡こまをか子安こやす篠原しのはらたる箕輪みのわもつと不有望ふいうぼう
これが小塚原を繰出すと、ゆくゆく箕輪みのわ山谷さんや金杉かなすぎあたりから聞き伝えた物好き連が、面白半分にうしおの如く集まって来て踊りました。その唄と踊りの千差万別なることは名状すべくもありません。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
(略)お熊は泣々なくなく箕輪みのわ無縁寺むえんでらに葬むり、小万はお梅をッては、七日七日の香華こうげ手向たむけさせた。
里の今昔 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
大隊長箕輪みのわ主計かずえ之助は六百石の旗本である。それが代地河岸に妾宅を持っていようとは、根井も今まで知らなかったのである。箕輪も勿論、秘密にしていたに相違ない。
行き行きて車はこの小路の尽頭はづれを北に折れ、やや広きとほりでしを、わづかに走りて又西にり、その南側の半程なかほど箕輪みのわしるしたる軒燈のきラムプを掲げて、剡竹そぎだけを飾れる門構もんがまへの内に挽入ひきいれたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
直孝を預かったのは箕輪みのわ在の庄屋だった。べつに館をつくるまでもなく、庄屋の家族とおなじ構えのなかで育てられたが、のちに余吾源七郎が守役として来、小者三人が付けられた。
青竹 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「——前もって、書面にて申し上げておきましたお客方、元、上州箕輪みのわの御城主、上泉伊勢守かみいずみいせのかみどのを御案内申しあげて参りました。宗厳様へ、その由、お伝えをお願いいたしまする」
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この話の舞台になっている天明のころの箕輪みのわは、龍泉寺りゅうせんじ村の北につづいた寂しい村であった。
箕輪心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
箕輪みのわの奥は十畳の客間と八畳の中のとを打抜きて、広間の十個処じつかしよ真鍮しんちゆう燭台しよくだいを据ゑ、五十目掛めかけ蝋燭ろうそくは沖の漁火いさりびの如く燃えたるに、間毎まごとの天井に白銅鍍ニッケルめつきの空気ラムプをともしたれば
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
安房守昌幸は信之にとって父、幸村は弟にあたる、父子兄弟は箕輪みのわでいっしょになり、徳川軍の旗下へ参加する筈だった。松子は実家にいるころ、真田氏のことはしばしば耳にしていた。
日本婦道記:忍緒 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
箕輪みのわ浄閑寺じょうかんじ、あすこの、投込みへ、無料ただで頼むよりしようがないでしょう」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのあいだを踏みわけて、勘次郎はともかくも箕輪みのわの方角へ落ちて行こうとすると、急ぐがままに何物にかつまずいて、危うく倒れかかった。踏みとまって見ると、それは一つの兜であった。
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
わたしが「箕輪みのわの心中」を書くときに、その場の趣を借用した。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)