突立つきた)” の例文
杖をこみち突立つきたて/\、辿々たどたどしく下闇したやみうごめいてりて、城のかたへ去るかと思へば、のろく後退あとじさりをしながら、茶店ちゃみせに向つて、ほっと、立直たちなおつて一息ひといきく。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
布団ふとんがまくれて、仰臥ぎょうがした初代の胸が真赤に染まり、そこに小さな白鞘しらさやの短刀が突立つきたったままになっていた。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
桜島は今だに鹿児島湾のなかに突立つきたつて、暢気坊のんきばうのやうにすぱり/\とけぶりを吹いてゐる。梅玉が今度の巡業に、すかされて鹿児島へ乗込むかは一寸見物みものである。
と云いながらきらりッと長いのをひっこ抜いて、ずぶりッと草原へ突立つきたてますと
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
傷は頸の両側にあり、奇怪な事には、それが三つずつ、まるで長い爪を突立つきたてたような形になっていた。——出血はひどいが生命いのちに別状はなさそうだ。新田は寛衣ガウンの裾を引裂ひきさいて手早く繃帯ほうたいをしながら
廃灯台の怪鳥 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「なんだか真白な、大きなものが砂地に突立つきたっていますよ」
月世界探険記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
突立つきたたゝずむ故門番は立出汝ぢは道にまよひし成ん何方へ行のぢやと言ふに城富は涙にむせかへりながらハイ/\南御番みなみごばん所は何れで御座りますととへば門番の者南御番所は此所こゝなるが何用有て來りしぞなにか願ひたき事でも有かと聞れ城富はハイ然樣さやうで御座ります御奉行樣へきふに御願ひが御座りましてまゐつた者で御座ります何卒どうぞ御取次を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
……なかで、山高やまかた突立つきたち、背広せびろかたつたのは、みな同室どうしつきやく。で、こゝでその一人ひとり——上野うへのるときりたまゝのちや外套氏ぐわいたうしばかりをのこして、こと/″\下車げしやしたのである。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
突立つきたてたまゝで居るんぢやありませんか。
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
突立つきたてたまゝでるんぢやありませんか。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)