祭祀さいし)” の例文
かねて神祇官時代には最も重要な地位に置かれてあった祭祀さいしの式典すら、彼の来て見たころにはすでに式部寮の所管に移されて
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それを祭祀さいしと祈願との力によって、国王世の主に進献せしめようとするのが、すべての公の行事の最初からの目的であった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
祭祀さいしぜんの光景 以上のごとき乱行らんぎょうが十二日ばかり続いて、いよいよ三日から始まるとなりますと、各寺から僧侶がラサ府をして出かけて来る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
政治と祭祀さいしとが密接に結合していたからである。これはおそらく世界共通の現象で、現在でも未開国ではその片影を認めることができるようである。
自由画稿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
それゆゑにこれ異變いへんがあるたびに、奉幣使ほうへいしつかはして祭祀さいしおこなひ、あるひ神田しんでん寄進きしんし、あるひ位階いかい勳等くんとうすゝめて神慮しんりよなだたてまつるのが、朝廷ちようてい慣例かんれいであつた。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
かたがた歌道茶事までも堪能たんのうに渡らせらるるが、天下に比類なき所ならずや、茶儀は無用の虚礼なりと申さば、国家の大礼、先祖の祭祀さいしも総て虚礼なるべし
貝塚かいづか即ち石器せきき時代人民のめより宗教上しうけふじやうの物を發見はつけんすとは如何にも誠しからず聞こゆべしと雖も、一定いつていの時日をたる後、或は一定の祭祀さいしを終りたる後は
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
第五種(呪願じゅがん編)祭祀さいし、鎮魂、淫祀いんし祈祷きとう、御守、御札、加持、ノリキ、禁厭きんよう呪言じゅげん呪咀じゅそ、修法
妖怪学講義:02 緒言 (新字新仮名) / 井上円了(著)
しかも、一国の重寄じゅうきに任ずる城代家老としては、しゅうの恨みを晴らすということも大切であろうが、それよりもまず主家の祭祀さいしの絶えざることを念とするのが当然だと信じたのである。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
その後、彼は神座をしつらえて、祭祀さいしを怠らなかったが、その生活はすこぶる豊かで、ただ大いに富むというほどでないだけであった。土地の人の世話で妻を迎え、後に仕えて令長となった。
もっとも、本体の石神様自身が、神か仏かただの人間か、古色蒼然そうぜんとして、名もなく、わけもわからぬおすがたを持っているのでありますから、祭祀さいしの方法もまた、これでいいのかも知れません。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蛭子は後に恵比寿神えびすがみとなり、今では田穀の神とさえあがめられているが、その前は商賈しょうか交易の保護者、もう一つ前には漁民の祭祀さいし当体とうたいであり
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そうした祭祀さいしや魔術の目的はいろいろであったろうが、その一つの目的はわれわれ人間の力でどうにもならない
自由画稿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
かたがた歌道茶事までも堪能たんのうに渡らせらるるが、天下に比類なき所ならずや、茶儀は無用の虚礼なりと申さば、国家の大礼、先祖の祭祀さいしすべて虚礼なるべし
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
形に厚くすというは、いわく、ただ祭祀さいしを行うなり。神に薄くすというは、いわく、去識厳しからざるなり。もし仏教をくるときは、すなわち神に厚くして、形に薄くす
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
それはまた我邦の祭祀さいしのすべてのものに伴なっていた要件で、特殊に重要なる稲という一つの穀物の収穫に際し、あらゆる荘重そうちょうなる儀式を備えて
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
科学の神殿を守る祭祀さいしつかさになろうと志す人、また科学の階段を登って栄達と権勢の花の山に遊ぼうと望む人達にはあまり参考になりそうに思われないのである。
科学に志す人へ (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
今までの祭祀さいし組織がゆるみ、この間の行事は公定こうていの五節供から除外せられていたので、土地の人だけが思い思いに、守り育てて来たものがその中に多く、そこで大きくなった人たちはもちろん
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)