硝子ビイドロ)” の例文
半分開いた眼が硝子ビイドロのゴト光って、頬ベタが古新聞のゴト折れ曲って、唇の周囲ぐるりが青黒うって、水を遣っても口を塞ぎます。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
僧都、すぐに出向うて、遠路であるが、途中、早速、硝子ビイドロとそのまがたまを取棄てさして下さい。お老寄としよりに、御苦労ながら。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これの内容も「透寫紙の製法」とか「硝子ビイドロ鏡の製法」とか「水の善惡を測る法」とか「石鹸の製法」「流行眼を治する法」とかいふ類のものばかりで
光をかかぐる人々 (旧字旧仮名) / 徳永直(著)
発菩提心!……向合むかいあった欄干の硝子ビイドロの船に乗った美女の中には、当世に仕立てたらば、そのお冬さんに似たのがたしかに。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
せいの低い、色の黄色あおい、突張つっぱった、硝子ビイドロで張ったように照々てらてらした、つやい、その癖、随分よぼよぼして……はあ、手拭てぬぐいを畳んで、べったりかぶって。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私が一番生捕いけどって、御覧じろ、火事の卵を硝子ビイドロの中へ泳がせて、追付おッつけ金魚の看板をお目に懸ける。……
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と言う、自分の湯呑ゆのみで、いかにも客の分といっては茶碗一つ無いらしい。いや、粗いどころか冥加みょうが至極。も一つ唐草からくさすかし模様の、硝子ビイドロの水呑が俯向うつむけに出ていて
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
公子 (一笑す)私の恋人ともあろうものが、無ければい。が、硝子ビイドロとは何事ですか。金剛石、また真珠の揃うたのが可い。……博士、贈ってしかるべき頸飾えりかざりをおしらべ下さい。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
四辺あたりのものはただ曇つた硝子ビイドロを透かして、目に映つたまでの事だつたさうだけれど。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
日中ひなか硝子ビイドロを焼くが如く、かっと晴れて照着てりつける、が、夕凪ゆうなぎとともにどんよりと、水も空も疲れたように、ぐったりと雲がだらけて、煤色すすいろの飴の如く粘々ねばねば掻曇かきくもって、日が暮れると墨を流し
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
分けて今度の花は、おいちどのがいたあかい玉から咲いたもの、吉野紙よしのがみかすみで包んで、つゆをかためた硝子ビイドロうつわの中へそっしまつても置かうものを。人間の黒い手は、此を見るが最後つかみ散らす。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
例のあかりの映る、その扁平ひらったい、むくんだ、が瓜核うりざねといった顔は、蒼黄色あおきいろに、すべすべと、しわが無く、つやがあって、皮一重ひとえ曇った硝子ビイドロのように透通って、目が穴に、窪んで、掘って、眉が無い。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
分けて今度の花は、お一どのがいたあかい玉から咲いたもの、吉野紙の霞で包んで、露をかためた硝子ビイドロうつわの中へそっしまってもおこうものを。人間の黒い手は、これを見るが最後つかみ散らす。
紅玉 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
道をはさんで、入口に清水のく、藤棚のかかった茶店があって、(六地蔵は、後に直ぐそのわきに立ったのですが、)——低く草の蔭に硝子ビイドロすだれが透いて、二つ三つ藍色あいいろの浪をいた提灯ちょうちんともれて
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
博士 水晶とは申す条、近頃は専ら硝子ビイドロを用いますので。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)