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眞劍
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しんけん
で、私は
異郷に遠く
旅出して
來ながらあんまり出歩くこともせずに、
始終机に向つてはその執筆に
專心した。私は
眞劍に、
純眞に努めつづけた。
第一は、
國民が
眞劍に
生命財産を
尊重するに
至ることである。
生命を
毫毛よりも
輕んじ、
財産を
塵芥よりも
汚らはしとする
時代においては、
地震などは
問題でない。
それ
程眞劍にやるべきものをと、
宗助は
昨夜からの
自分が、
何となく
耻づかしく
思はれた。
「ほんとにあたし
眞劍に
言つてるのよ。お
願ひですから、
子供にだけは、
子供にだけはみじめな
思ひをさせないやうにね」
地震を
考慮するやうになつたのは、
各個人が
眞劍に
生命財産を
尊重するやうになり、
都市が
發達し
科學思想が
普及してからのことで、
近く三百
年來のことと
思はれる。
奧さんは
針の
手を
無意識なやうに
膝に休めて、ほの白んだ、硬
張つた
顏を青木さんの
方に向けながら、
眞劍な
声でいつた。
國民はこゝにおいてか
眞劍に
耐震的建築の
大成を
絶叫しつゝあるのである。(完)
正に
骨味を
削るが如くあれほど
必死に
眞劍に
爭ひ
戰はなければならないとは! さう言えば、
昔爭ひ
將棋に
敗れて
血を
吐いて死んだ
若い
棋士があつた。
蜂の
眞劍さが、その
子供に
對する
用意周到さが
何か
皮肉に
胸に
呼びかけてゐるやうな
氣持だつた。
その
眞劍さに
打たれて、
夫はそんな
事を
考へつづけながら、ぢつと
瞳を
凝らしてゐた。