発足ほっそく)” の例文
旧字:發足
中にも堀部安兵衛は、大石と離れてさえ決行しようとしていただけに、明くる朝すぐに発足ほっそくして、潮田うしおだ又之丞とともに江戸にせ下った。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
三人が午飯ひるめしを食いながら相談の末に、あしたを待つまでもなく、これからすぐに発足ほっそくすることになった。秋といっても七月の日はまだ長い。
半七捕物帳:59 蟹のお角 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
凡ては忠相が一人で飲み込んで全事件をみ消したのだった。二人は、忠相の情で姿を変え、数刻すうこくおくれて、同じ東海道を伊勢いせへと発足ほっそくする。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
信念からの発足ほっそくでなかったことを自認せずにいられない。元来そういう大望を抱いていなかった自分であることも誰よりも自分が知っている。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
福士大尉は、情報報告のため、ただちにこのクリムスビーを発足ほっそくすべく、アンの亡骸なきがらをそっと下に置いて、立ち上った。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ひとまずラサ府からダージリンへ来るまでの間においてこの辺が一番寒い所でしょう。その翌六月十一日朝四時に起きて少しく茶をわかして飲んでから発足ほっそくしたです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
なきなみだで静岡を発足ほっそくして叔父を便たよって出京したは明治十一年、文三が十五に成た春の事とか。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
祖五郎は又信州上田在中の条にいる姉のもとへも手紙を送る。一度お国表くにおもてへ行って来るとのみしたゝめ、別段細かい事は書きません。さて両人は美作の国を指して発足ほっそくいたしました。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
顕智 この春奥州おうしゅう発足ほっそくいたしました。(涙ぐむ)所詮しょせん御臨終のお間には合いますまい。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
そして報告のために生駒を外国事務係へ、下横目一人を京都の藩邸へ発足ほっそくさせた。
堺事件 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
これがために宇津木兵馬は、その日発足ほっそくというわけにもゆかなくなりました。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
拙者わし此度このたび九国への遍歴を思い立ち、もとより絵かきの気楽な境涯もはや親兄への暇乞いとまごいも済まし、其方と今宵語り明して、明朝直ちに発足ほっそくなそうと、御覧ぜられえ、此の通り旅の姿をいたして居る。
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
その場に発足ほっそくさせておくと、老神主に伝えさせました。
まさに発足ほっそくしようとしているきわどいところだった。
「殿様、はばかりながら御安心なせえまし。きっとあっしが引き受けてこの書を栄三郎へ届け、すぐその足で奥州をさして発足ほっそくいたしますから」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
豊臣家とよとみけ代表者だいひょうしゃとして、御岳みたけの兵法大講会に参加さんかするめいがくだって、可児、井上、真田の三大坂表おおさかおもて発足ほっそくしたのは、その翌々日よくよくじつのことだった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
直接に大王から受けねばならぬという事ですから伝手つてを求めてこの老人に頼んだのでございます。その紹介状を持って一月十日にカルカッタを発足ほっそくしてネパールに行ったです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
形の如く堂々たる武者修行のいでたち成って、神戸から江戸へ向けて発足ほっそく
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
かの芭蕉の「奥の細道」をたどって高館たかだちの旧跡や松島塩釜の名所を見物しながら奥州諸国を遍歴したい宿願で、三日前のゆうぐれに江戸を発足ほっそくして、路草を食いながらここまで来たのであると云った。
半七捕物帳:33 旅絵師 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
かがやかしき(一郎にいわせると)新体制への発足ほっそくであった。
未来の地下戦車長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「まあ、そんな事は、どうでもよい。実は、貴公たちが、発足ほっそくして後、わしも江戸の親戚みよりに急用が出来てな」
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すぐそのあとを追って、お美夜ちゃんが母親のお蓮様とともに、これも日光へ発足ほっそくしてしまう。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「いや、そうもならぬ。滝川一益かずますから援軍の催促で、にわかに、伊勢路への発足ほっそくだ」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お高どの、あす発足ほっそくじゃ。その前に、ぜひ一つ、きいておきたいことがある。そのために、ちょっとここへやって来たのじゃが、どうだ、わたしのところへ、嫁にきてはくれぬかな」
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「まことに済まないが、貴公、これから俺を背なかにかけて、発足ほっそくしてくれ」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もう菊池半助きくちはんすけも、家中かちゅうの人々とともに、武州ぶしゅう御岳みたけ発足ほっそくしていて留守るすだった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はしの間にも、彼は、そのさかんなる食欲と同じように、絶えまなく時務を聴き、処置を断じ、また発足ほっそく措置そちをあれこれと左右へ命じておくなど、飽くまで旺盛な気力と周到しゅうとうな頭脳を働かせていた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
原始部落の闘争から発足ほっそくして、次第に大をなし、郷を称え、郡をなし、やがて国を形成し、さらに国と国との複数が戦い戦い単位に近づき、ついにその最大なるものが二つとなり一つにまでなって
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「藤吉郎。この度はそちに命じる。明日中に、洲股へ発足ほっそくせい」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「しかたがねえ。話が、不調とあれば、首にして、江戸へ連れて帰るだけの事。——貴公たちは、先へ、発足ほっそくしてくれ。そして、兵部様へ、丈八郎の方は、百に一つ、見込みが難しいとお告げしておいて貰いたいが」
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、説いたものが実にその発足ほっそくであったわけだ。
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「直ちに発足ほっそく
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)