疎末そまつ)” の例文
その時女房に勘当されたが、やっとよりが戻って以来、金目な物は重箱まで残らず出入先へ預けたから、家には似ない調度の疎末そまつさ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あきぼんには赤痢せきりさわぎもしづんであたらしいほとけかずえてた。墓地ぼちにはげたあかつちちひさなつかいくつも疎末そまつ棺臺くわんだいせてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「ナニ今日はあんなお嬢様然とした風をしているけれども、うちにいる時は疎末そまつ衣服なりで、侍婢こしもとがわりに使われているのです」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
大学の椅子さえ抛つくらいだから、七シルリングの御弟子を疎末そまつにするのは無理もない。先生の頭のなかにはこの字典が終日終夜槃桓磅礴ばんかんほうはくしているのみである。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それは国道から西へ十町ばかり登った赤松という部落にあり、明らかに古材を持って来て急造したらしい疎末そまつな、しかしがっちりした三棟の建物から成っていた。
花咲かぬリラ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
いま花魁の出ているは矢ッ張り軍艦ふねのお客で、今夜は二回うらをかえしにお出でなされたんでげすから、疎末そまつにはしない、しきりに一昨夜おとついのばん不勤ふづとめを詫していると、新造しんぞが廊下から
かれ自分じぶんにはつたときは、ふるすゝだらけの疎末そまつ建築けんちく燒盡やきつくして主要しゆえう木材もくざいわづかほのほいてつてる。執念しふね木材もくざい心部しんぶんでる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
老母ばあさんかまへてゞもたやうに小風呂敷こぶろしきつゝみいて手織ておりのやうにえる疎末そまつ反物たんものして手柄相てがらさうせた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)