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炷
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た
ふりがな文庫
“
炷
(
た
)” の例文
最初は死んだ母親の形見の珠数を
炷
(
た
)
いて見ましたが、これは素晴らしい香木で、すっかり丈太郎の異常嗜好を満足させてしまいました。
新奇談クラブ:05 第五夜 悪魔の反魂香
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
窓も
襖
(
ふすま
)
も閉めきったままで、病人の
躰臭
(
たいしゅう
)
がこもっているため、必要以上に香を
炷
(
た
)
いているらしく、座敷いっぱいがむせるほど匂っていた。
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
侍女の
万野
(
までの
)
は、姫の黒髪の根に
伽羅
(
きゃら
)
の香を
炷
(
た
)
きこめたり、一すじの乱れ髪も見のがさないように櫛をもって
梳
(
す
)
いたりしていた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あのたおやかな古文の妙、たとえば
真名盤
(
まなばん
)
の
香
(
こう
)
を
炷
(
た
)
いたようなのが、現代のきびきびした
物言
(
ものいい
)
に移されたとき、どんな珍しい匂が生じるだろう。
『新訳源氏物語』初版の序
(新字新仮名)
/
上田敏
(著)
そしてこの胸壁を周らした小さな街は、四囲の寂寥をしてさらに悲しきものとするために、時ありて幾条か、静かに
炊爨
(
すゐさん
)
の煙を空に
炷
(
た
)
くのである。
測量船
(新字旧仮名)
/
三好達治
(著)
▼ もっと見る
で、
閑
(
ひま
)
な折にちよい/\遊びに
往
(
ゆ
)
くと、金春家では香好きな豊和への御馳走とあつて、いつも秘蔵の香を
炷
(
た
)
いたものだ。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
かすかに
炷
(
た
)
き捨ての、香の匂うたしなみのいい、師匠の寝間にはいると、菊之丞、紫の滝縞の丹前を、ふわりと羽織って、床の上に坐っていたが
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
几帳
(
きちやう
)
のかげに、長い髮に香を
炷
(
た
)
きしめさせてゐるのもある。
鬢上
(
びんあ
)
げをしたまま煙草をくゆらしてゐるのもある。
春
(旧字旧仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「
恋桜反魂香
(
こいざくらはんごんこう
)
」——つまり、お
七
(
しち
)
が、
吉三
(
きちざ
)
の絵姿を
炷
(
た
)
くと、煙の中に吉三が姿を現わして、所作になる——という、あの「
傾城浅間嶽
(
けいせいあさまだけ
)
」を翻あんしたもの——そして
京鹿子娘道成寺
(新字新仮名)
/
酒井嘉七
(著)
わが庵の竹の林に、こぬか雨今朝も
湿
(
しめ
)
れり。春さきのこぬか雨なり。ふるとしも見えぬ雨なり。こぬか雨笹にこもりて、
香
(
かう
)
炷
(
た
)
けば
香
(
かう
)
もしめりて、事もなし、ただ
明
(
あか
)
るけし。
観相の秋
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
炷物
(
たきもの
)
を
炷
(
た
)
いているのでもあろうか? 香料を身につけているのでもあろうか? 駕籠の中から形容に絶した、
馨
(
かんば
)
しい匂いが匂って来た。いやいやそうではなさそうであった。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
隔
(
へだ
)
ての
襖
(
ふすま
)
をとり払つた、だだつ広い座敷の中には、枕頭に
炷
(
た
)
きさした香の煙が、一すぢ昇つて、天下の冬を庭さきに
堰
(
せ
)
いた、新しい障子の色も、ここばかりは暗くかげりながら
枯野抄
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
照らせしわが身みながら
炷
(
た
)
きてあらむ。
春鳥集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
香はしきりに
炷
(
た
)
かれてゐた
愛の詩集:03 愛の詩集
(新字旧仮名)
/
室生犀星
(著)
近寄せてはなりませんぞ、御係りへはわたしから届ける、もう一つ、
麝香
(
じゃこう
)
を
炷
(
た
)
きなされ、無ければ持たせてよこす、毒を消すには至極だから
山椿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
私は折々書見の眼をあげて、この古ぼけた仏画をふり返ると、必ず
炷
(
た
)
きもしない線香がどこかで
匀
(
にお
)
っているような心もちがした。それほど座敷の中には寺らしい閑寂の気が
罩
(
こも
)
っていた。
疑惑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
何処
(
どこ
)
からともなく
聴
(
きこ
)
えて来る、クラヴサンやヴィオラ・ダ・ガンバや——今の世の生活には縁の遠い古代の楽器から発するほのかな音楽や、沈香や白檀を
炷
(
た
)
くらしい幽雅な香の匂いなどは
奇談クラブ〔戦後版〕:01 第四の場合
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
馥郁
(
ふくいく
)
と香を
炷
(
た
)
くというおさまりかたなので
旧聞日本橋:23 鉄くそぶとり(続旧聞日本橋・その二)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
護摩
(
ごま
)
炷
(
た
)
き修し、
伴天連
(
ばてれん
)
の
救
(
すくひ
)
よぶとも
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
香木
(
かうぼく
)
の
膸
(
ずゐ
)
の
膏
(
あぶら
)
を
炷
(
た
)
き
燻
(
く
)
ゆし
有明集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
予感というのであろう、加代の心はつよく
咎
(
とが
)
められるような不安を感じた。かな女は部屋をきれいに片づけ、香を
炷
(
た
)
いて待っていた。この屋敷には梅の木が多かった。
日本婦道記:梅咲きぬ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
蓮座を
炷
(
た
)
いて仏座と名づけ、外に慈覚大師の念珠、足利義政の卓、楊貴妃の椅子、唐人の笠、石帯——などさえ焚いたと言うことですから、丈太郎の欲望も決して例の無いことではありません。
新奇談クラブ:05 第五夜 悪魔の反魂香
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
籠
(
こ
)
に
炷
(
た
)
きぬ、ひるがへる魚を見よ。
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
わが手をそへて
炷
(
た
)
きもしつ
春鳥集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
「客間を少し飾ったらいいだろう、牧野は花が好きだからなにか活けるさ、香も
炷
(
た
)
いて置く方がいいな、それから……酒は抜きだがまるで無しという訳にもいくまい」
柿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
しめやかに香などを
炷
(
た
)
いて居ります。
銭形平次捕物控:251 槍と焔
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
炷
(
た
)
きこめぬ、そのまごころ。
新頌
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
三日にいちどずつ松尾が
剃刀
(
かみそり
)
を取って
月代
(
さかやき
)
をあたってくれた、肌衣は毎日とり替えられた、狭い家の中は掃除がゆき届いて、香が
炷
(
た
)
かれたり、床に花が活けられたりした。
葦
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
由紀はふかくうなだれたまま辛うじてそう
頷
(
うなず
)
いた。……母が立ったとき、由紀もいっしょに立って仏間へいった。彼岸にはいったので仏壇には燈明がともり香が
炷
(
た
)
いてあった。
日本婦道記:藪の蔭
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
雨の日の
黄昏
(
たそがれ
)
で、座敷の中はすでに暗く、香を
炷
(
た
)
くかおりが
噎
(
む
)
せるほど強く匂っていた。
五瓣の椿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
花を飾り香を
炷
(
た
)
き、なにか軽口を云っては妻を笑わせ、またしばしば音曲の巧者を招いて、
襖
(
ふすま
)
をはらったこちらの座敷で演奏させ、自分は妻の
枕許
(
まくらもと
)
で、さも楽しそうに酒を飲んだ。
契りきぬ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そのうちに香の匂いがして来、あんまり強く匂うので、どうかしたかと思ってみにゆくと、病人が
躯
(
からだ
)
が臭いと云うので、香を
炷
(
た
)
いているのだから心配には及ばない、とおしのは答えた。
五瓣の椿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
雪洞
(
ぼんぼり
)
を屏風の外に置いたので、そこはほの暗く、
炷
(
た
)
いた香が爽やかに匂っていた。
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
上使をおくりだしてから、みよは仏壇にあかしをいれ、良人の遺髪をあげて、香を
炷
(
た
)
いた。そして安之助とふたりしてその前に坐ったとき、はじめて思うままに、しかしこえをしのんで泣いた。
日本婦道記:箭竹
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
おしのはおまさを呼んで、香炉と香を持って来させ、父の枕許で
炷
(
た
)
いた。
五瓣の椿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
薬は二服を一度にのみ、香を
炷
(
た
)
いて、やや暫く静かに坐った。
月の松山
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼女は仏壇に香を
炷
(
た
)
いて合掌した。
三十二刻
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
炷
漢検1級
部首:⽕
9画
“炷”を含む語句
一炷
空炷
十炷
炷物
香一炷