濁水だくすい)” の例文
火口かこういけ休息きゆうそく状態じようたいにあるときは、大抵たいてい濁水だくすいたゝへてゐるが、これが硫黄いおうふくむために乳白色にゆうはくしよくともなれば、熱湯ねつとうとなることもある。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
ぶりき板の破片や腐った屋根板でいたあばらは数町に渡って、左右から濁水だくすいさしはさんで互にその傾いたひさしを向い合せている。
天正てんしょう十年、秀吉が中国の高松城を水攻めにした折も、孤城五千の部下の生命いのちに代って、濁水だくすいの湖心に一舟いっしゅううかべ、両軍の見まもる中で切腹した清水長左衛門宗治むねはる
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
八木君ががっかりして頭をさげると、頭は濁水だくすいの中にざぶりとつかり、彼はあわてて頭をあげた。するとごていねいに、頭をガラス天井にいやというほどぶつけてしまった。
時計屋敷の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
濁水だくすいがゴーゴーという音を立てて、隅田川すみだがわの方へ流込ながれこんでいる、致方しかたがないので、衣服きものすそを、思うさま絡上まくりあげて、何しろこの急流ゆえ、流されては一大事と、犬の様に四這よつんばいになって
今戸狐 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
遊び好きなる事に於て村の悪太郎あくたろう等に劣るまじい彼は、畑を流るゝ濁水だくすいの音颯々さっさつとして松風の如く心耳しんじ一爽いっそうの快を先ず感じて、しり高々とからげ、下駄ばきでざぶ/\渡って見たりして
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ミサコはお互の少時間の自由を、対岸を流れる濁水だくすいに眼をうつして云った。
女百貨店 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
濁水だくすいおともなく
霜夜 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
二の橋の日向坂はその麓を流れる新堀川しんほりかわ濁水だくすいとそれにかかった小橋こばしと、ななめに坂を蔽う一株ひとかぶえのきとの配合がおのずから絵になるように甚だ面白く出来ている。
滔々とうとう濁水だくすいをこえて、曹軍は内城にふみ入った。審配は最後まで善戦したが力尽き捕えられた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どぶんとその身は濁水だくすいの中に落ちてしまった。
時計屋敷の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
水道門のせきをきって、間道かんどうのなかへ濁水だくすいをそそぎこめ、さすれば、いかなる天魔てんま鬼神きじんであろうと、なかのふたりがおぼれ死ぬのはとうぜん、しかも、味方にひとりの怪我人けがにんもなくてすむわ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
沈滞の濁水だくすいを突如として打つ時は
と、どっと濁水だくすいが侵入してきた。
時計屋敷の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
投げかけられたくさりをはらって、龍太郎と忍剣が、流るる駕籠をジャブジャブといかける、その時もうこの街道かいどうは、まんまんたる濁水だくすいの川となって、やりの折れや、血あぶらや、死骸しがいがうきだし
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むなしく往生おうじょうしてしまった主従しゅじゅう三人は、もう胸の上まで濁水だくすいにひたって、の枝につかまりながら、敵のゆくえをにらんでいたが、そのとき、加賀見忍剣かがみにんけんは、はじめて破術はじゅつの法を思いだして
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)