はげし)” の例文
影が、結んだ玉ずさのようにも見えた。——夜叉ヶ池のお雪様は、はげしいなかにおゆかしい、野はその黒雲くろくも尾上おのえ瑠璃るり、皆、あの方のお計らい。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
席上は入乱れて、ここを先途せんどはげしき勝負の最中なれば、彼等のきたれるに心着きしはまれなりけれど、片隅に物語れる二人は逸早いちはやく目をそばめて紳士の風采ふうさいたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
転変てんぺんはげしきはしと某老人ぼうらうじん申候まうしそろ其訳そのわけ外充内空ぐわいじうないくう商略せふりやくにたのみて、成敗せいはい一挙いつきよけつせんとほつそろ人の、其家構そのいへかまへにおいて、町構まちかまへにおいて、同処どうしよ致候いたしそろよりのことにて、今も店頭てんとううつたかきは資産しさんあら
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
神職 (魔を切るが如く、太刀たちふりひらめかしつつ後退あとずさる)したたかな邪気じゃ、古今の悪気あくきじゃ、はげしい汚濁じゃ、わざわいじゃ。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「大変だ、」とはげしくいうと、金之助は寝台ねだいからずるりと落ちたが、ひとしく扉から顔を出して、六ツの目はむこう、突当りの廊下へ注いだ、と思うと金之助が身をていして
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
三度五度は訳も解らず、宿のものが回生剤きつけだ、水だ、で介抱して、それでまた開きも着いたが、日一日数は重なる。段々開きが遅くなって、はげしい時は、半時も夢中で居る。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ずっと川上へくと、そこらは濁らぬ。山奥の方はあかるい月だ。真蒼まっさおはげしい流が、白くさっと分れると、おおきな蛇が迎いに来た、でないと船が、もうその上は小蛇の力で動かんでな。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一夏はげしい暑さに、雲の峰も焼いたあられのように小さく焦げて、ぱちぱちと音がして、火の粉になってこぼれそうな日盛ひざかりに、これからいて出て人間になろうと思われる裸体はだかの男女が
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
織次ははげしくいった。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)