準備ようい)” の例文
マーキュ なんぢゃ、調子てうしあはせて? 吾等われら樂人扱がくにんあつかひにするのか? 樂人扱がくにんあつかひにりゃ、みゝ顛覆でんぐりかへらする音樂おんがくきかす。準備よういせい。
されど旅客の來りていこふものもなければか、店頭みせさきには白き繭の籠を幾箇いくつとなく並べられ、客を待てる準備よういは更に見えず。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
毎々お世話をかけまする、今日も今日とて鉄五郎様がこれこれとつまんで話されました時の私のびっくり、刃物を準備よういまでしてと聞いた時には
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
かねてから猫の産月うみづきが近づいたので、書斎の戸棚とだな行李こうり準備よういし、小さい座蒲団を敷いて産所にてていたところ
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
……ウチのとっさんは、平生いつもから小型ちいさな、鱶捕ふかどりの短導火線弾ハヤクチを四ツ五ツと、舶来の器械燐寸まっち準備よういしていた。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
これは日本の結納ゆいのうとは違う。もちろん何程いくらという内約も何もない。そこで娘と息子の両親は例のごとく卜筮者うらないしゃあるいは神下かみおろしに聞いて吉日を択んで、いよいよ結婚の礼式を行う準備よういをするのです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
最も品位を落とせば、種々の職業が有らうが、其様さうはゆかぬ……といふので婦人の職業問題が起つて居るらしいが、婚姻に持参金の準備よういが要る国柄である丈け、日本よりは何んだかひどいやうである。
未亡人と人道問題 (新字旧仮名) / 二葉亭四迷(著)
いくら下りだって甲府までは十里近くもある路を、夜にかかって食物の準備よういも無いのに、足ごしらえも無しで雪の中を行こうとは怜悧りこうのようでも真実ほんと児童こども
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
カピ長 婚儀こんぎためにと準備よういした一さい役目やくめへて葬儀さうぎよういはひのがくかなしいかね、めでたい盛宴ちさう法事ほふじ饗應もてなしたのしい頌歌しょうかあはれな挽歌ばんか新床にひどこはなはふむ死骸なきがらようつ。
今日も今日とて鐵五郎様がこれ/\と掻摘んで話されました時の私の吃驚、刃物を準備よういまでしてと聞いた時には、ゑゝ又かと思はずどつきり胸も裂けさうになりました
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
カピ妻 では、準備よういをするひまもあるまい。もうやがよるぢゃ。
耄碌頭巾に首をつゝみて其上に雨を凌がむ準備よういの竹の皮笠引被り、鳶子とんび合羽に胴締して手ごろの杖持ち、恐怖こは/″\ながら烈風強雨の中を駈け抜けたる七藏おやぢ、やうやく十兵衞が家にいたれば
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
さて目※まどろむ間も無く朝早く目がめると、平生いつもの通り朝食あさめしの仕度にと掛ったが、その間々ひまひまにそろりそろりと雁坂越の準備よういをはじめて、重たいほどにれた我が顔の心地しさをも苦にぜず
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
耄碌頭巾もうろくずきんに首をつつみてその上に雨をしのがん準備よういの竹の皮笠引きかぶり、鳶子合羽とんびがっぱに胴締めして手ごろの杖持ち、恐怖こわごわながら烈風強雨の中をけ抜けたる七蔵おやじ、ようやく十兵衛が家にいたれば
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)