すが)” の例文
伽羅きゃらのようにからみつくようなところもなく、白檀びゃくだんのように重くもない。すが々しい、そのくせ、どこかほのぼのとした、なんとも微妙な匂いである。
顎十郎捕物帳:16 菊香水 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
自分のやしきと見くらべて、なんと、この家のすがすがとよく調ととのっていることだろう。柱も黒く、べつに調度の飾りとてないが、なんとなくつやがある。
櫟林くぬぎばやしや麦畠や街道や菜園や、地形の変化に富んだその郊外は静かですがすがしかった。乳牛のいる牧場は信子の好きなものだった。どっしりした百姓家を彼は愛した。
雪後 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
かな文字を五つ七つと覚えはじめるにつれ、習字をしたあとのすがすがしくおちつく気持と、なにかしらよいことをしたという満足感は、うめにとっては初めての大きなよろこびであった。
初蕾 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
しづけくも畏きすがた、畏くも安けきこの、この殿の青きいらかの、あやにすがしも。
(新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ものぐるひをまもりたまひて年を経し君がみひげはつひに白しもそのすがしさや
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
おくふかく薄草色のひそみゐて咲く白百合のすがしかりけり
遺愛集:02 遺愛集 (新字新仮名) / 島秋人(著)
あさりする丹頂の前にしまらくは目守まもりたりけり心すがしく
河馬 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
妻ごみにこもりし神の神代よりすがの熊野に立てる雲かも
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
あたらすが。 (歌謠番號六五)
「どうです。これも、あら尊や、と申せませんか。何と、毛の禿げチョロけた鼻面なども、老いのすがしさと、御賞美にあずかりたそうな顔しているではありませんか」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いっぱいに開け放した硝子扉ケースメントから、薄荷はっか入りの、すがすがしい朝の海風うみかぜが吹き込んでくる。
キャラコさん:07 海の刷画 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
酔わされたような気持で、そのあとはいつも心がすがすがしいものに変わっていた。
泥濘 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
しづけくもかしこすがたかしこくもやすけき此の、この殿の青きいらかのあやにすがしも。
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
おのづからきこゆる音のすがしさよ春の山よりながれくる水
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
西大寺の静然じょうねん上人が参内した。腰はかがまり、眉は雪かと白く、まことに高徳の僧らしくみえた。折ふし、西園寺ノ内大臣実衡さねひらが見かけ、「あら、尊や。老いのすがしさ」と三らいした。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのそばに坐って、季節のはなしや小鳥のはなしをするだけでも、なんともいえない楽しい気持になり、こころの隅々にまですがすがしい風が吹きこんでくるようなうれしい思いがするにちがいない。
キャラコさん:10 馬と老人 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
眼もひらく初夏のすがしさわれ聴けりかつこうかつこうの光の録音
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
まことにもすがし松原天馳けて舞ひくだるはねのけはひこそすれ
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
子には子の白の毛帽子かぶらせつなにしかすがし朝の霧ぞも
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
いづれよし花はすがしよ朝花と咲きも咲かずも露しげき花
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
いづれよし花はすがしよ朝花と咲きも咲かずも露しげき花
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
下葉うちたたと石うつすがし花ほほの木の花の一夜落ちつつ
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
下葉うちたたと石うつすがし花ほほの木の花の一夜落ちつつ
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
春の明けをすがし茅蜩音に湧くと吾が心神こころどよ揺りつつ透る
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
すがしくも今朝ふる雨や新葉にひは立つ矮檜そなれのいろの石に映ろふ
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
すがしくも今朝ふる雨や新葉にひは立つ矮檜そなれのいろの石に映ろふ
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
日の光月のごときに玉蘭はくれんの花さゆれつつあるがすがしさ
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
眼をひらき歩む林の小綬鶏は霜踏み越えてすがしかるべし
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
容顔のすがしさ、胸に薔薇色ばらいろの薄ぎぬはふり
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
すがしきは雪に立つもの
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
すがしきは雪に立つもの
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
すがしくも白きの指
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
海顫ひ、すががきがれ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)