注連飾しめかざり)” の例文
三吉は南向の日あたりの好い場所をえらんで、裏白だの、譲葉ゆずりはだの、だいだいだのを取散して、粗末ながら注連飾しめかざりの用意をしていた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
通町とおりちょうでは暮の内から門並揃かどなみそろい注連飾しめかざりをした。往来の左右に何十本となく並んだ、軒より高いささが、ことごとく寒い風に吹かれて、さらさらと鳴った。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
神明しんめいやしろきたれば(下巻第七図)烏帽子えぼしの神主三人早くも紅梅の咲匂さきにおへる鳥居に梯子はしごをかけ注連飾しめかざりにいそがはし。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
年の市は所々の宮寺にあったが、愛宕の年の市は芝辺では最も盛んで、藩邸の者もこの市で正月の物を調えたもので、うちの下部もその晩新しい手桶や注連飾しめかざりなどを買って帰った。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
彼が大根は二股三股はまだしも、正月の注連飾しめかざりの様に螺旋状らせんじょうにひねくれからみ合うたのや、章魚たこの様な不思議なものを造る。彼の文章は格に入らぬが、彼の作る大根は往々芸術の三昧に入って居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
正月しやうぐわつ二日目ふつかめゆきひきゐ注連飾しめかざりみやこしろくした。んだ屋根やねいろもとかへまへ夫婦ふうふ亞鉛張とたんばりひさしすべおちゆきおと幾遍いくへんおどろかされた。夜半よなかにはどさとひゞきことはなはだしかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
正月は二日目の雪をひきい注連飾しめかざりの都を白くした。降りやんだ屋根の色がもとにかえる前、夫婦は亜鉛張トタンばりひさしすべり落ちる雪の音に幾遍か驚ろかされた。夜半よなかにはどさと云う響がことにはなはだしかった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
通町とほりちやうではくれうちから門並揃かどなみそろひ注連飾しめかざりをした。徃來わうらい左右さいうなんぽんとなくならんだ、のきよりたかさゝが、こと/″\さむかぜかれて、さら/\とつた。宗助そうすけも二しやくあまりのほそまつつて、もんはしら釘付くぎづけにした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)