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殺氣
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さつき
と
扉の
外でひき
呼吸に
呟く
聲、
彈丸の
如く
飛んで
行く
音。
忽ち
手負猪の
襲ふやうな、
殺氣立つた
跫音が
犇々と
扉に
寄る。
御米は
小六の
憮然としてゐる
姿を
見て、それを
時々酒氣を
帶びて
歸つて
來る、
何所かに
殺氣を
含んだ、しかも
何が
癪に
障るんだか
譯が
分らないでゐて
甚だ
不平らしい
小六と
比較すると
前なる
縁の
障子に
掛けた、十
燭と
云ふ
電燈の
明の
屆かない、
昔の
行燈だと
裏通りに
當る、
背中のあたり
暗い
所で、
蚊がブーンと
鳴く……
其の、
陰氣に、
沈んで、
殺氣を
帶びた
樣子は
殺氣朦々として
天を
蔽へば、
湯船は
瞬く
間に、
湯玉を
飛ばして、
揚場まで
響渡る。