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のこり
『これで
可し、
殘の
竅の
數が
貴君の壽命だ、
最早これでお
暇と
致さう』と
飄然老叟は
立去て
了つた。
渡し
殘六十兩は
己が
物とし是迄に
掠取し金と合せ見るに今は七百兩餘に成ければ
最早長居は成難しと或日
役所にて
態と
聊かの
不調法を仕出し主人へ申譯
立難しとて
書置を
「
俺も
飯でも
食はうかえ」
勘次は
風呂敷包から
辨當の
殘を
出して
冷たい
儘ぷす/\と
噛つた。
否、
殘なく
味ひて、かれも人なる
落し忽ち
産後の
血上り是も其夜の
明方に
相果ければ
跡に
殘しお三婆は
兩人の
死骸に取付天を
仰ぎ地に
俯し
泣悲しむより外なきは見るも
哀れの次第なり
近邊の者ども
婆が
泣聲を
ば
立たまひたり是に
依て御列座も皆々
退參と相成りければ跡に越前守只一人
殘て
手持なき體なりしが外に
詮すべもなくて
凄々として御役宅を立ち去り歸宅せられしが忠義に
凝なる所存を