死神しにがみ)” の例文
死神しにがみ吾等われら婿むこ死神しにがみ吾等われら嗣子あとつぎ此上このうへ吾等われらんでなにもかも彼奴あいつれう、いのち財産しんだいなにもかも死神しにがみめにれませうわい。
死神しにがみはなおも大きな、うつろな目で、皇帝をじろじろみつめていました。そしてあたりは、まったくおそろしいほど、しいんとしていました。
『命あっての物種だてエ事よ、そうじゃアねえか、まアまア今夜なんか死神しにがみに取っ付かれそうな晩だから、早く帰ってよく気を落ち着けて考えるんだなア。』
郊外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
つかんで十兵衞が其の儘息はたえにけり長庵刀の血をぬぐひてさやに納め懷中くわいちう胴卷どうまきを取だし四十二兩はふくかみおとゝの身には死神しにがみおのれがどうにしつかりくゝり雨もやまぬにからかさ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
男は代々木の多聞院門前に住む経師屋きょうじやのせがれ徳次郎、女は内藤新宿甲州屋の抱え女お若で、ままならぬ恋の果ては死神しにがみに誘われて、お若は勤め先をぬけ出した。
半七捕物帳:60 青山の仇討 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
考えると何でもその時は死神しにがみに取り着かれたんだね。ゼームスなどに云わせると副意識下の幽冥界ゆうめいかいと僕が存在している現実界が一種の因果法によって互に感応かんのうしたんだろう。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それから幾年もたつて後、死神しにがみがわたしのうちのそばを通りかゝりました。——この女はもう八十になつてゐる。十分生きたといふものだ。今日は、あの世へつれていつてやらう。
エミリアンの旅 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
「だって、そりゃ、あんまりあっけないこった、せめて——明日まで延ばしてくれよ、明日まで……明日になると、また何か風向きが変らぬとも限らん。仏頂寺、貴様は今、不意に死神しにがみにとりつかれたんだ」
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
橋のうえの弥生に、眼に見えぬ黒い翼の死神しにがみが寄り添った。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
パリス だまされて、なかかれて、侮辱ぶじょくされて、賤蔑さげすまれて、ころされてしまうたのぢゃ。にく死神しにがみめにだまされたのぢゃ。
死神しにがみが、わたしの胸の中にいるんです!』と、その女は言いました。『ああ、どうか休ませてください!』
徳三郎は死神しにがみに出合ったよりも怖ろしくなって、殆ど夢中でかれを突き倒して逃げた。その晩から彼は大熱を発して、十日ばかりも蛇のように蜿うち廻って苦しんだ。
半七捕物帳:30 あま酒売 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
エミリアンは、そのおいしい葡萄酒ぶだうしゆによつてきて、夢のやうな気持になりました。二百年も生きてるといふ白髪のおばあさん、魔法使まはふつかひうはさ死神しにがみ巴旦杏はたんきやうの実……何もかも夢のやうです。
エミリアンの旅 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
「お前の後ろには死神しにがみがついているぞ」
カピ長 いかにも、きてふたゝかへらぬ支度したくが。おゝ、婿むこどの、いざ婚禮こんれいまへに、死神しにがみめが貴下こなたつま寢取ねとりをった。あれ、あのやうにはなすがたいろせたわ。
陛下が目をみひらいて、ごらんになると、おむねの上には、死神しにがみが、皇帝の金のかんむりをかぶり、片手には皇帝のけんを、片手に皇帝のうつくしいはたをもって、すわっていました。
六 死神しにがみと老婆の話
エミリアンの旅 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)