此邊このあたり)” の例文
新字:此辺
北八きたはち大丈夫だいぢやうぶだ、と立直たちなほつて悠然いうぜんとなる。此邊このあたりぢんまりとしたる商賣あきなひやのきならび、しもたやとるは、産婆さんば人相見にんさうみ、お手紙てがみしたゝめどころなり。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
バルタ (傍を向きて)あゝははせられるが、ま、此邊このあたりにかくれてゐよう。おかほいろ心懸こゝろがゝり、おこゝろうちうたがはしい。
番甲 此邊このあたりだらけぢゃ。墓場はかば界隈かいわいさがさっしゃい。さゝ、つけ次第しだいに、かまうたことはい、引立ひきたてめさ。
蒸暑むしあついのがつゞくと、蟋蟀こほろぎこゑ待遠まちどほい。……此邊このあたりでは、毎年まいねん春秋社しゆんじうしや眞向まむかうの石垣いしがき一番いちばんはやい。震災前しんさいぜんまでは、たいがい土用どよう三日みつか四日よつかめのよひからきはじめたのが、年々ねん/\、やゝおくれる。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その方法てだてぢゃが……おゝ、害心がいしんよ、てもはやはひってをるなア、絶望ぜつばうしたものむねへは!……おもすはあの藥種屋やくしゅや……たしか此邊このあたりんでゐるはず……いつぞやをりは、襤褸つゞれ