さん)” の例文
新字:
『まだ。今日か明日歸るさうだ。吉野さんがゐないと俺は薩張さつぱり詰らないから、今日は莫迦に暑いけれども飛出して來たんだ。』
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
一人住居の相手なしに毎日毎夜さびしくつて暮して居るなれば手すきの時には遊びにも來て下され、私は此樣ながら/\した氣なれば吉ちやんの樣な暴れさんが大好き
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
仕舞しまひむめさんは我等の方へ來て居るがいゝ然樣さうすればあと苦勞くらうもなし安心なりと萬事に拔目ぬけめなき長兵衞何樣公事宿商賣程有て行屆ゆきとゞく事勿々なか/\感心かんしんなるものなり扨是より翌日よくじつ早々長兵衞は家主へことわ世帶せたい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「ほんまにお月さんいふものは寂しゆおまんな。あてら平生はゆるゆるお月さんを見る事もあらへんが、斯うして見てゐると、お月さんいくつ、十三七つと子供の頃に歌つた事なんぞ思ひ出しまんな。」
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
『まあ、左樣で御座いますか!』と一層驚いて、『私もあの、其家そこへ參りますので……渡邊さんの妹さんと私と、矢張り同じクラスで御座いまして。』
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
正太は大人らしうかしこまりて加減が惡るいのですかと眞面目に問ふを、いゝゑ、と母親怪しき笑顏をして少し經てばなほりませう、いつでも極りの我まゝさん、嘸お友達とも喧嘩しませうな
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
見ると直樣すぐさま莞爾々々にこ/\しながら押頂おしいたゞきて懷中ふところ仕舞しまゆゑ大岡殿コレ/\小僧其處そこたべよと言はれしかば三吉ヘイ有難う御座いますがうちもつゆき番頭さんに見せてからたべないとしかられますと申すに大岡殿オヽ然樣さうか手前は利口者りこうものだサア夫れなら今一ツ遣はさうと此度は自身に縁側えんがはまで持出もちいでられ手渡しにしてすぐたべよ/\と申されしに三吉は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
『日向さんの眞似をして私も英語をやりませうか?』と言つて、富江は皮肉に笑つてる眼で男を仰いだ。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
母親はゝおやあやしき笑顏ゑがほをしてすこてばなほりませう、いつでもきまりのわがまゝさんさぞ友達ともだちとも喧嘩けんくわしませうな、眞實ほんにやりれぬぢようさまではあるとてかへるに、美登利みどりはいつか小座敷こざしき蒲團ふとん抱卷かいまき持出もちいでゝ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)