指摘してき)” の例文
平次はさう言ひましたが、その頃の岡つ引警察制度の缺陷けつかんを一盲人に指摘してきされたやうな氣がして、何んとはなしに小鬢こびんを掻きます。
すれば、ツルの方で意外のところから花のありかを指摘してきしてみせるのが当然なのだがツルはそうしなかった。「そいじゃ明日あしたさがしな」といった。
花をうめる (新字新仮名) / 新美南吉(著)
と安部君は一々材料を指摘してきしてくれたが、自分丈けは全然棚へ上げていた。「平凡人の平凡生活」を説く牧師にしてさとらざること尚おこの通りだ。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「まあ、バラ色のっちゃな舌」と、ジナイーダは、頭が床に届かんばかりに身をかがめ、横合いから猫の鼻の下をのぞきこみながら、そう指摘してきした。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
板の間のことをその場で指摘してきされると、何ともいい訳けのない困り方でいきなり平身低頭してびを入れ、ほうほうのていげ帰った借金取があったと
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
著者ちよしや想像そう/″\では、かり地震豫報ぢしんよほう出來できても、それは地震ぢしんおこりそうなある特別とくべつ地方ちほう指摘してきるのみで
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
じょするに際し伝にも明瞭めいりょう記載きさいけてあるためにその原因や加害者を判然と指摘してきし得ないのが残念であるが
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
なるほど指摘してきされて見ると、呉春ごしゅんの小品でも見る位には思えるちょっとした美がある。小さな稲荷いなりのよろけ鳥居が薮げやきのもじゃもじゃのそばに見えるのをほめる。
野道 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
一人は、田鍋課長の指摘してきしたとおり、多分お化け鞄を博士から奪った兇賊であろうと思われる。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかるにこの老人が彼らに命名した時は、ことさら悪い特徴をふざけて指摘してきしたのである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
見よ、彼は自らの芥子けしの種子ほどの智識をもってかの無上土を測ろうとする、その論を更に今私は繰り返すだもずる処であるが実証の為にこれを指摘してきするならば彼は斯う云っている。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
はは道理どうりわない言葉ことばを、令二れいじは、指摘してきしました。
金歯 (新字新仮名) / 小川未明(著)
また菊池桐孫まさひこの『五山堂詩話』巻の九には「竹渓、源ノ典、字ハ伯経、尾張ノ人ナリ。今幕府ニ給仕ス。傲骨崚嶒ごうこつりょうそう、詩ヲ論ズルコトもっとも精厳ナリ。人多ク指摘してきこうむル。余騒壇ニ相逢フゴトニ隠トシテ一敵国ノ如シ。」
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
生濕りの土の上に、一方だけ向いた水下駄の齒の跡が行儀よく揃つて居るのを平次は指摘してきするのです。
と、機械人間は、笛を吹くような気味のわるい声でこのダムの設計のまずいことを指摘してきした。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「それだと、大がかりな、叙事詩じょじしのテーマにはなりかねますな」と、さも勿体もったいらしくかれ指摘してきした。——「しかし、叙情詩じょじょうしの材料として、あなたのイデーを頂くとしましょう」
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
これは八五郎が指摘してきしたので、『錢形平次親分に注意されて來た』とはつきり斷つて居ります。
長造はあご左右さゆうにしゃくって、表通に鼻緒問屋はなおどんやの多いのを指摘してきした。この浅草の大河端おおかわばたの一角を占める花川戸はなかわどは、古くから下駄げたの鼻緒と爪革つまかわの手工業を以て、日本全国に知られていた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)