手薄てうす)” の例文
當に行先々の氣配りに難儀なんぎ艱難辛苦かんなんしんくともいはん方なき事どもなり漸々にして三州岡崎迄はきたれどももとより手薄てうすの其上に旅の日數も重なれば手當の金子かね
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
簡單かんたん普請ふしんには大工だいくすこのみ使つかつただけその近所きんじよ人々ひと/″\手傳てつだつたので仕事しごとたゞにちをはつた。なが嵩張かさばつた粟幹あはがら手薄てうすいた屋根やねれも職人しよくにんらなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
その別れぎわに、男はきのうから世話になったお礼をしたいが、路用は手薄てうすであるし、ほかには持ち合わせも無いから、これを置いて行く。しかし今すぐに使ってはいけない。
半七捕物帳:47 金の蝋燭 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
代助の懐中くわいちうは甚だ手薄てうすになつた。代助は此前ちゝつた時以後、もううちからは補助を受けられないものと覚悟をめてゐた。今更平気なかほをして、のそ/\出掛でかけて行く了見は丸でなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「ここは一兵たりとも大事だ。ひとたび平井山のご陣が敗れんか、織田方全体のやぶれとなろうも知れん。——まして城方に比しては手薄てうすなところ、わしの留守中には、百人分も戦え。——来るなっ」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一切が実に手薄てうすになっている。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
くんで差出すぼん手薄てうす貧家ひんか容體ありさま其の内に九助は草鞋わらぢひもときあしを洗ひて上にあがり先お里へも夫々それ/″\挨拶あいさつして久々ひさ/″\つもる話しをなす中にやがてお里が給仕きふじにて麥飯むぎめし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
出し兼て此方より申達なば家も領地りやうちぼうに振るべし大切の 勅使御參向のみぎり橋の手薄てうすにて水中へ落されしと有ては 天子へ刄向はむかふも同然逆罪ぎやくざいとがのがるべからず爰を存じて無事に扱はんと申を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)