ひらた)” の例文
またいう、コンモードは水陸ともに棲む、たけ十五フィート周十八インチ、頭ひらたひろく、尾細長くてとがる、褐色で脊と脇に栗色を点す。
膝に手を垂れ、腰をかがめて、たわむれに会釈すると、トンはよくその心を得て、前足を下して尻尾を落した。ひらたい犬の鼻と、主婦おかみの低い鼻は、畳を隔てて真直まっすぐに向い合った。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
をかしな事には、少し離れて寫すと、顏が長くなつたり、ひらたくなつたり、目も鼻もゆがんで見えるのであつたが、お定はおさな心に、これは鏡が餘り大き過ぎるからだと考へてゐたものだ。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
ですから生れ附の縮毛には必ず何所かにひらたい所が有る、若し夫が無ければ本統の縮毛では無い、所で私しが此毛を疏末そまつな顕微鏡に掛けてっく視ました所もとからすえまで満遍なく円い
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
おそらく扁穿とはひらたき芽が土を穿って出るとの意味ではないかと思う。
植物一日一題 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
これすなわち海蛇で鰻様に横ひらたき尾を具え海中に限って住むがインド洋太平洋とその近海に限る、およそ五十種あり(第六図)。
大きな折烏帽子おりえぼしが、妙に小さく見えるほど、頭も顔も大の悪僧の、鼻がひらたく、口が、例のくいしばった可恐おそろしい、への字形でなく、唇を下から上へ、への字を反対にしゃくって
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
をかしな事には、少許すこし離れて写すと、顔が長くなつたり、ひらたくなつたり、目も鼻も歪んで見えるのであつたが、お定は幼心に、これは鏡が余り大き過ぎるからだと考へてゐたものだ。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
鼻に長き鬚あり尾ひらたくしてえび(またはいなご)に似、大きさ鯨のごとく両側に足多く外見あたかもトリレミスのごとく海をおよぐ事はやしと、トリレミスとは
ひらたい、あぶらぎつた、赤黒い顔には、深く刻んだ縦皺が、真黒な眉と眉の間に一本。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
年紀とし七十ななそじあまりの、髪の真白まっしろな、顔のひらたい、年紀の割にしわの少い、色の黄な、耳の遠い、身体からだにおう、骨の軟かそうな、挙動ふるまいのくなくなした、なおそのことばに従えば、金色こんじきに目の光るおうなとより
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
右の話にあるヴァラヌスは、アフリカから濠州まで産する大蜥蜴で、まず三十種ある、第五図はナイル河に住み、水をおよぐため尾が横ひらたい。がくの卵をむさぼり食うから土人に愛重さる。
母と叔父とは、齢もとを以上違つて居たし、青い面長とひらた赤良顔あからがほ、鼻の恰好がややてゐた位のものである。背の婷乎すらりとした、髪は少し赤かつたが、若い時は十人並には見えたらうと思はれる容貌かほかたち
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
かえって百人一首中なる大宮人のはやしたそれのように、見る者をして古代優美の感を起さしむる、ただしちと四角な顔で、唇は厚く、鼻はひらたい、とばかりでは甚だ野卑に、且つ下俗に聞えるけれども
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかと認めがたけれど大抵青大将という蛇に似たり、この蛇水中にて人の手足をまとえど捕り殺す事を聞かず。また出羽最上川に薄黒くしてひらたき小蛇あり、いかだに附いて人を捕り殺すという。
出家も、ひらたくはあるが、ふっくりした頬にえみを含んで
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ひらたく見せたりしてゐる。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
ひらたく見せたりしてゐる。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)