戯談じやうだん)” の例文
旧字:戲談
何時いつから消えたんだい。おい、シイ坊……戯談じやうだんぢやないぜ……。(寝台に近づかうとして、そこに倒れてゐる女のからだにつまづく)
クロニック・モノロゲ (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
老人は戯談じやうだんのやうに哄笑したが、しかし僕はそのなかに戯談とは違つた一種の情熱を見てとつたやうに思つた。それから妙な焦慮を。
南京六月祭 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
先生せんせいさん戯談じやうだんいつて、なあにわしや爺樣ぢいさまたれたんでさ」勘次かんじ只管ひたすら醫者いしやまへ追求つゐきう壓迫あつぱくからのがれようとするやうにいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
三十五六の、齢の割に頬のけて血色の悪い顔、口の周匝まはりを囲むやうに下向きになつた薄い髭、濁つた力の無い眼光まなざし——「戯談じやうだんぢやない。これでも若い気か知ら。」
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
若い男や女に交つて、後で考へると我ながら気恥しく思ふ様な洒落しやれ戯談じやうだんをも平気で言つたりした。
厄年 (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
真面目を守本尊にして、驀地まつしぐらに進む形はまだ対世間である。決して絶対ではない。真面目は笑や、戯談じやうだんや、滑稽や、さういふものゝ中からも捜し出して来られるやうでなければいけない。
解脱非解脱 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
戯談じやうだんいふな。三千メートルのまつたゞなかだぞ。辛棒しんぼうしろ、よわいやつだ。』
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
あなたのそばへ寄ると鼠のにほひがしますよなどと男が戯談じやうだんを云ふと云ふ事である。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
誰も戯談じやうだんにして取合はないし、女など居ないでも、さう淋しくないが、その内、恋人でもできて、矢張り、独身は、本当だつた、それなら、と後悔する人の無いやうに、ついでながら、広告しておく
ハハハ、さう怒られては、談話はなしが出来ぬ。今のは、ほんの戯談じやうだんさ。
したゆく水 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
百合子は、戯談じやうだんらしく胸を張つて滝本に握手を求めた。
南風譜 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
なに來世らいせい戯談じやうだんつちやけません。』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
卯一郎 (なほも、否定的な微笑を続け)手遅れ? 見込がない……? (甚だ不自然な笑ひ声をたてる)戯談じやうだんでなく、先生……。
医術の進歩 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
「さうよ、らこつちのおとつゝあと同年齡おねえどしだつけな」かれ自身じしん創意さういではなくて何處どこかでいた記憶きおくまゝ反覆はんぷくしてさうして戯談じやうだんあへてした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
とお藤さんは薄笑ひを浮べながら戯談じやうだんに、「あんた一度、知らん顔して買ひに行つてお見やす。」
乳の匂ひ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
其処そこでは田舎にめづらしい海の魚が食へた。赤い帯をめて戯談じやうだんを言ふ女も大勢居た。藩のい家柄の子息むすこで女房子がありながら、此処ここでさういふ女におぼれて評判に立てられたこともあつた。
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
戯談じやうだんぢやない。それより何です、面白い話といふのは?』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
さういふ中で、年も年でございましたけれど、わたくしだけには、誰一人、戯談じやうだんを云ひかけるものもございませんでした。
(新字旧仮名) / 岸田国士(著)
さけそつちのはうへたんとけねえでれえてえな」かね博勞ばくらうはけろりとした容子ようすをして戯談じやうだんをいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
何かありさうなものだと思つて、丁寧に探して見たが、そこには人から聞いた馬鹿話しか、普通に戯談じやうだんにいふ笑ひ話以上に何物もない。男女のことだつて、さう大して深く知つてゐるとは思へない。
三月の創作 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
戯談じやうだんは別として、ラウちやんは、ほんとに行つてしまつたのかなあ……。あの、お得意の鼻唄が、まだ耳に残つてるわ。
モノロオグ (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
戯談じやうだんのやうにしてそれをはづして
(新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
戯談じやうだんぢあないわ、これは、みんな拾円札よ」つて、あたしが、それこそいくら云つても、きかないんですよ。
雅俗貧困譜 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
とま子 戯談じやうだんだわ。そんなに、はつきり物が云へるぢやないの。顔色だつてどうもないし……。
医術の進歩 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
でも、そん時、あの人の眼を見なかつたら、あたしは、まだ、戯談じやうだんぐらゐに思つたでせう。そら、やつぱり、あの眼なのよ。あたしは、ハッとして、力まかせに、手を振り放したの。
モノロオグ (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
印刷屋 戯談じやうだん云つちやいけない。今度つていふ今度は、大将が承知しませんよ。
雅俗貧困譜 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
なに、それ、死んだ真似? ナンマンダブツ、ナンマンダブツだわ、それこそ……。もう、痛くないんでせう。(顔をのぞき込み)戯談じやうだんぢやないわ、呼吸いきをしてるの、それで……? まあ、驚いた。
医術の進歩 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)