慶長けいちょう)” の例文
天正てんしょう慶長けいちょうのころに少しく学問のあるものがこれを見いだして、その紙を自分の考えによって整理し、それを写したと仮定すれば
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
われ等のような慶長けいちょう元和げんなの古風を慕い、まだ尚武の風のあった寛永気質かたぎを尊ぶ者などは、所謂いわゆる、頭が陳腐ふるいと云われるやつだろう。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
文禄ぶんろく慶長けいちょうえきの時、加藤清正きよまさが朝鮮からこの種子を持って来たというので、このオランダミツバに昔キヨマサニンジンの名があった。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
かつ慶長けいちょうの初めには疫病えやみがはやり、天変地異てんぺんちいがつづいた。こんなことを仏僧や神官が神仏の怒りとして持ち出さずにはおくわけはなかった。
慶長けいちょう五年九月十五日、東西二十万の大軍、美濃国みののくに不破郡ふわぐんせきはらに対陣した。ここまでは、どの歴史の本にも、書いてある。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
大部分は慶長けいちょう以後、やや年処をて後に集録せられた、いわば島人の記憶の残りであるが、その目途と用意との必ずしも統一せられていないところに
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
十三年四月赤松殿阿波国あわのくにあわせ領せられ候に及びて、景一かげかずは三百石を加増せられ、阿波郡代あわぐんだいとなり、同国渭津いのつに住居いたし、慶長けいちょうの初まで勤続いたしそろ
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
慶長けいちょう年代のころには定見取米を御物成おものなりといい、木租を御役榑おやくくれという。名はどうあろうとも、その実は同じだ。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
境内けいだい石碑せきひがあつて、慶長けいちょう五年せきはらえきの時に、山内一豊やまのうちかずとよがこゝに茶亭ちゃていを築いて、東海道をのぼつて来た徳川家康をもてなした古跡こせきであるといふことが彫刻されてゐる。
小夜の中山夜啼石 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
元和げんな慶長けいちょう兜首かぶとくびを取って二百五十石、それ以来、知行が上ったことがない。式目しきもくおもてでは、士分しぶんの者三人を召抱えていなくてはならぬが、妻子五人が食べ兼ねるでのう。
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
慶長けいちょう十八年四月に頓死したが、本多上野介正純ほんだこうずけのすけまさずみが石見守に陰謀が有ったと睨んで、直ちに闕所けっしょに致し置き、めかけを詮議して白状させ、その寝所の下を調べさしたところが、二重の石の唐櫃からびつが出て
怪異黒姫おろし (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
豊太閤ほうたいこう朝鮮ちょうせんを攻めてから、朝鮮と日本との間には往来が全く絶えていたのに、宗対馬守義智そうつしまのかみよしとし徳川とくがわ家のむねけてきもいりをして、慶長けいちょう九年のれに、松雲孫しょううんそん文※ぶんいく
佐橋甚五郎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
後の、醍醐だいご、桃山、慶長けいちょうにわたる一世代のらんまんたる文化の興隆に、これら五奉行の文官的な功績が、他の武将の武勲に劣るものでなかったことはいうまでもない。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
慶長見聞集けいちょうけんもんしゅう』という本を読んで見ると、今から三百四十年ほど前の、慶長けいちょう六年霜月しもつき二日、江戸丸焼まるやけという大火があったのち、幕府は命令をだして草葺くさぶきをあらためさせ
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その中には、遠く慶長けいちょう享保きょうほう年代からの御年貢皆済目録かいさいもくろくがあり、代々持ち伝えても破損と散乱との憂いがあるから、後の子孫のために一巻の軸とすると書き添えた先祖の遺筆も出て来た。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
忠義の先代義康は安房あわの侍従と呼ばれた人で、慶長けいちょう八年十一月十六日、三十一歳で死んでいる。その三周忌のひと月かふた月前のことであるというから、慶長十年の晩秋か初冬の頃であろう。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
また「慶長けいちょう甲寅こういん」の塚石は、その死骸を扱った小者が、ピオの死後、その土壌から鶏血草が咲いたため、迷信をおこして、病むものが多くひそかに計らって建てたものであった。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
甲子夜話かっしやわ」には、慶長けいちょう十二年の朝鮮の使にまじっていた徳川家の旧臣を、筧又蔵かけいまたぞうだとしてある。林春斎の「韓使来聘記かんしらいへいき」等には、家康にえっした上々官をきんぼくの二人だけにしてある。
佐橋甚五郎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
あるいはまた、そういう木材で受け取らない村々では、慶長けいちょう年度の昔から谷中一般人民に許された白木六千駄のかわりに、それを「御切替おきりかえ」と称えて、代金で尾張藩から分配されて来た。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)