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やぞう
ふりがな文庫
“
弥蔵
(
やぞう
)” の例文
ガラッ八の八五郎は薄寒そうに
弥蔵
(
やぞう
)
を構えたまま、
膝
(
ひざ
)
小僧で銭形平次の家の木戸を押し開けて、狭い庭先へノソリと立ったのでした。
銭形平次捕物控:127 弥惣の死
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
何をつまらねエ
奴
(
やつ
)
に、いつまで引ッかかっているんだ——といわないばかりの鼻先を
凍
(
こお
)
らせて、
木蔭
(
こかげ
)
に、
弥蔵
(
やぞう
)
をきめて
屈
(
かが
)
んでいる。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
着流しのうしろへ脇差だけを申しわけにちょいと横ちょに突き差して肩さきに
弥蔵
(
やぞう
)
を立てていようという人物。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
と
唐突
(
だしぬけ
)
に毒を吐いたは、
立睡
(
たちねむ
)
りで居た頬被りで、
弥蔵
(
やぞう
)
の
肱
(
ひじ
)
を、ぐいぐいと
懐中
(
ふところ
)
から、八ツ当りに
突掛
(
つっか
)
けながら
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
吉原
冠
(
かぶ
)
り、みじん柄の
素袷
(
すあわせ
)
、素足に
麻裏
(
あさうら
)
を突っかけた若い男、
弥蔵
(
やぞう
)
をこしらえて、意気なこえで
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
▼ もっと見る
その
一人
(
ひとり
)
は頬冠りの
結目
(
むすびめ
)
を締め直しつつ他の一人は懐中に
弥蔵
(
やぞう
)
をきめつつ廓をさしておのづと歩みも
急
(
せわ
)
し
気
(
げ
)
なる、その
向
(
むこう
)
より
駒下駄
(
こまげた
)
に
褞袍
(
どてら
)
の裾も長々と
地
(
ち
)
に
曳
(
ひ
)
くばかり着流して
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
黍
(
きび
)
を煮ている鍋を下ろして、
大鉄瓶
(
おおてつびん
)
とかけかえ、小鳥籠を前にしてぼんやりと、火にあたっているところへ、村田寛一が、胸に
弥蔵
(
やぞう
)
をこしらえながら、ブラリとはいって来ました。
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
奇妙な
風体
(
ふうてい
)
をして——例えば洋服の上に羽織を引掛けて肩から
瓢箪
(
ひょうたん
)
を
提
(
さ
)
げるというような
変梃
(
へんてこ
)
な
扮装
(
なり
)
をして
田舎
(
いなか
)
の
達磨茶屋
(
だるまぢゃや
)
を遊び廻ったり、
印袢纏
(
しるしばんてん
)
に
弥蔵
(
やぞう
)
をきめ込んで職人の仲間へ入って見たり
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
「何をあわててるんだ。格子で鼻面を打ったり、
弥蔵
(
やぞう
)
を
拵
(
こせ
)
えたまま人の家へ飛込んだり、第一、突っ立ったまま話をする奴があるかい」
銭形平次捕物控:140 五つの命
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
吉原冠り、下ろし立ての
麻裏
(
あさうら
)
の音もなく、平馬の後からついて行く闇太郎——、河岸は暗し、頃は真夜中。いい気持そうに、
弥蔵
(
やぞう
)
をきめて、いくらか、
皺枯
(
しゃが
)
れた、
錆
(
さび
)
た調子で
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
弥蔵
(
やぞう
)
をこしらえていた手をつン出して、紐の宅助は、ニヤリと面相を変えながら
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
目も隠れるほど深く
俯向
(
うつむ
)
いたが、口笛を吹くでもなく、右の指の節を唇に当て、素肌に着た絹セルの
単衣
(
ひとえ
)
の
衣紋
(
えもん
)
を
緩
(
くつろ
)
げ——
弥蔵
(
やぞう
)
という奴——内懐に落した手に、何か持って一心に
瞻
(
みつ
)
めながら
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
まだ若そうな着流し、
弥蔵
(
やぞう
)
が板について、
頬冠
(
ほっかむ
)
りは少し
鬱陶
(
うっとう
)
しそうですが、素知らぬ顔で格子から赤い御神籤を解く手は、恐ろしく器用です。
銭形平次捕物控:138 第廿七吉
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
と、言う
呑気
(
のんき
)
な声が聞えて、やがて、人山を割って、一人の職人とも、遊び人ともつかないような風体の、
縞物
(
しまもの
)
の
素袷
(
すあわせ
)
の
片褄
(
かたづま
)
をぐっと、引き上げて、左手を
弥蔵
(
やぞう
)
にした、苦みばしった若者が現れた。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
仮住居
(
かりずまい
)
の
門口
(
かどぐち
)
に立ったガラッ八の八五郎は、あわてて
弥蔵
(
やぞう
)
を抜くと、
胡散
(
うさん
)
な鼻のあたりを、ブルンと
撫
(
な
)
で廻すのでした。
銭形平次捕物控:085 瓢箪供養
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
飴の中から
飛出
(
とびだ
)
したような愉快な江戸っ子で、大柄の縞の背広は着ておりますが、その上から
白木綿
(
しろもめん
)
の三尺を締めて、背広に
弥蔵
(
やぞう
)
でもこさえたい人柄です。
奇談クラブ〔戦後版〕:12 乞食志願
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
振り返った欽之丞、
弥蔵
(
やぞう
)
さえも
拵
(
こしら
)
えて、
頬冠
(
ほおかぶ
)
りの中に匂う顔は、歌舞伎芝居の花道で見るような男振りです。
芳年写生帖
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
敷居際に立ちはだかった八五郎は、片手
弥蔵
(
やぞう
)
を懐へ落して、時々十手をチラリチラリと見せるのでした。
銭形平次捕物控:099 お篠姉妹
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
大きな
弥蔵
(
やぞう
)
を二つ
拵
(
こしら
)
えて、肩で調子を取って玉水一座の裏からヌッと入ると、これが四ツ目の銅八の手柄をデングリ返させる気でやって来たとは、誰の目にも見えません。
銭形平次捕物控:118 吹矢の紅
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
平次に冷かされつけている狭い
袷
(
あわせ
)
、
弥蔵
(
やぞう
)
を念入りに二つ
拵
(
こしら
)
えて、左右の袖口が、胸のあたりで
入山形
(
いりやまがた
)
になるといった恰好は、「色男には誰がなる」と、言いたいようですが、
四方
(
あたり
)
が妙に淋しくて
銭形平次捕物控:015 怪伝白い鼠
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
弥
常用漢字
中学
部首:⼸
8画
蔵
常用漢字
小6
部首:⾋
15画
“弥”で始まる語句
弥
弥生
弥陀
弥撒
弥次馬
弥勒
弥次
弥々
弥縫
弥増