廟堂びょうどう)” の例文
そうなると、公卿くげもまた公卿で、廟堂びょうどうの鼠と化し、きのうは武家をたのみ、きょうは僧団をおだてて、政治を自分たちの擁護に濫用らんようする。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
学問も相当なものだし、廟堂びょうどうに立って仕事のできる点で将来も有望だが、私には愛女の婿はそれでもないという心がある。相当に濃厚にある
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
近くはまた北上上流の軽快なる語音を廟堂びょうどうに聞くように、少なくとも一部の仙台藩閥を、東京の言語の上にも打ち立てしめたいものである。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
韓山かんざんの風雲はいよいよ急に、七げつの中旬廟堂びょうどうの議はいよいよ清国しんこくと開戦に一決して、同月十八日には樺山かばやま中将新たに海軍軍令部長に補せられ
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
千載せんざい一遇いちぐう、国家存亡の時にでっくわして、廟堂びょうどうの上に立って天下とともにうれいている政治家もあるのに……こうしてろくろくとして病気で寝てるのはじつになさけない。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
また西郷南洲さいごうなんしゅう廟堂びょうどうより薩南さつなんに引退した時の決心、また多数にようせられ新政厚徳こうとくはたぐるに至った心中は、おそらくはその周囲におった人にも分からなかったであろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
聞いてからなるほどそんな事もあろうかと思って試みに当代ならびにその以前の廟堂びょうどう諸侯の骨相を頭の中でレビューしながら「大臣顔」なるものの要素を分析しようと試みたのであった。
自由画稿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「国政多難の昨今、廟堂びょうどうに立つものにその位の敵あるは当り前じゃ。行けい」
老中の眼鏡 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
漢室の廟堂びょうどうそのものが腐敗しているのだ。彼は、その中に棲息せいそくしている時代人だから、その悪弊を持っているに過ぎない
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところが、ひとり後主劉禅りゅうぜんの憂いに止まらず、出師すいしの表によって掲げられた孔明の「北伐の断行」は、俄然、蜀の廟堂びょうどうに大きな不安を抱かしめた。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、廟堂びょうどうの政客たちは、目さきだけをみて、新政府の経済面には、もうなんら憂いはないものと、楽観しだした。
何事につけ廟堂びょうどうの奸賊は、朝命をもって、みだりに命じ、そむけば違勅の罪を鳴らそうというのであります。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「笑わすな。貢税みつぎ膏血こうけつでぶよぶよ肥っている廟堂びょうどうの豚めが。梁山泊で赤恥かいた上、ここへ来てまで尻の穴で物をいう気か。人民の敵とは、うぬらのことだ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そういう法皇を奉じて、まだまだ、衰兆すいちょうの見えない平家を廟堂びょうどうから追い落そうなどとしても、所詮しょせん、躍るもの自身の自滅以外、何らの運動となるわけのものではない。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なれどその楠木も、土豪のゆうでこそあれ、中央のけんではありませぬ。廟堂びょうどうのご政治むきなどには、とんと役にもたたぬ者と、記録所や決断所でもはや定評となっております
天子のみことのりを私して、みだりに朝威をかさに振舞うもの、すなわち廟堂びょうどう鼠賊そぞく、天下のゆるさざる逆臣である。われ、いやしくも、遠祖累代るいだい、漢室第一の直臣たり。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
廟堂びょうどう監察のは、問題として、これを取り上げ、一応、孔明のところへ相談に来た。
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
廟堂びょうどう人あるも人なきに似、ち木を組んで宮殿となし、階陛かいへいすべて落ち葉を積み、禽獣きんじゅうと変りなきに衣冠させてろくを喰らわしめ、議廟ぎびょうもまた、狼心狗走ろうしんくそうのともがら、道を口に唱え
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
廟堂びょうどうの権勢からも、身を退いて、ただ法然門下の一帰依者きえしゃとして、しずかに余生を送っている人であったが、現在、自分の息女の一人は、善信の妻として嫁いでいるし、弟の慈円僧正は
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いつの年であったか、最愛の長男が不慮の死をとげたり、また、政敵のために廟堂びょうどうから職をひく身になったり、いろいろ晩年の境遇が変ってくるにつれ、その人生観にも大きな変化がきて
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
匹夫ひっぷみな衣冠いかんして、一躍、廟堂びょうどうに並列したのである。——実に、一個の董卓のてのひらから、天下の大権は、転々と騒乱のうちにもてあそばれ、こうしてまたたちまち、四人の掌に移ったのであった。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
如才じょさいない政治家だの民衆の鼻息びそくばかりうかがっている大臣などは、いつの世でも民衆は見ていたくない。民衆の本能は、高い廟堂びょうどうにたいして、やはり土下坐どげざし、礼拝し、歓呼かんこして仰ぎたいものである。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
廟堂びょうどうもまた、いにしえの大宮人おおみやびとの心ではありません。
「なにを、廟堂びょうどうの冷や飯食いめ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)