幾曲いくまが)” の例文
たまにはくるが、もう以前いぜんのやうにやま邸町やしきまちべい、くろべい、幾曲いくまがりを一聲ひとこゑにめぐつて、とほつて、山王樣さんわうさまもりひゞくやうなのはかれない。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
われるままにわたくし小娘こむすめみちびかれて、御殿ごてんながなが廊下ろうか幾曲いくまがり、ずっとおくまれる案内あんないされました。
湖畔亭から街道を五六町行った所に、山路やまじに向ってそれる細い杣道そまみちがあります。それを幾曲いくまがりして半里もたどると、何川の上流であるか、深い谷に出ます。谷に沿って危げな桟道さんどうが続きます。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ある所では路が全く欠けてしまって、向うの崖からこちらのがけへ丸太を渡したり、さんを打った板をけたり、それらの丸太や板を宙でつなぎ合わして、崖の横腹を幾曲いくまがりも迂廻うかいしたりしている。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
あなのやうな眞暗まつくら場末ばすゑ裏町うらまちけて、大川おほかはけた、近道ちかみちの、ぐら/\とれる一錢橋いちもんばしふのをわたつて、土塀どべいばかりでうちまばらな、はたけいけ所々ところ/″\侍町さむらひまち幾曲いくまがり、で
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
私達は黴臭かびくさい真暗な廊下を幾曲いくまがりかしてとある広い部屋に通された。外観の荒廃している割には、内部は綺麗に手入れがしてあったけれど、それでも、どこやら廃墟といった感じをまぬがれなんだ。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ぐらぐらと揺れる一銭橋いちもんばしと云うのを渡って、土塀ばかりでうちまばらな、畠も池も所々ところどころ侍町さむらいまち幾曲いくまがり、で、突当つきあたりの松の樹の中のそのやしきに行く、……常さんのうちを思うにも、あたかもこの時、二更にこうの鐘のおと
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)