山脈やまなみ)” の例文
日光諸山を屏風の如くめぐらし、其れから燕巣、物見山、鬼怒沼山を經て黒岩山に續く山脈やまなみもあらかた黒裝束の一組である。
黒岩山を探る (旧字旧仮名) / 沼井鉄太郎(著)
次の朝、あけぼのの光がまだずっと向うの山脈やまなみを薄桃色に染めているころ、みな、一せいに起き出してドタバタ騒ぎはじめた。
かりそめの旅にはあれど、夕されば内にも堪へず、に出でてひとり在りけり。向ひ吹く川の瀬の風、川風の吹きのこごえに、我が向ひ辿る高崖、遥か見るきた山脈やまなみ
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
逢坂あふさか山からずつと左に湖南の方に連なつてゐる山脈やまなみとともに段々と遠く水の彼方に薄れていつた。
湖光島影:琵琶湖めぐり (旧字旧仮名) / 近松秋江(著)
北アルプスや立山たてやまを踏破してきた身には、何でもありませんが、割合に奥行きが深くて、どこまでいっても山脈やまなみが尽きないのです。松や杉の木立が、鬱蒼うっそうしげっています。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
草茫々たる碓井峠うすいとうげ彼方あなたに関所が立っていた。眼の下を見れば山脈やまなみで、故郷の追分も見えわかぬ。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
立川で青梅おうめ線に乗り換えて羽村で下りた。生えはじめたばかりの麦畑や枝の芽吹いていない桑畑が見えて、まだ雪の消えずに残っている武甲の山脈やまなみが眼に迫ってくる感じだった。
西隣塾記 (新字新仮名) / 小山清(著)
遠い山脈やまなみひだに雪を見て高啼くのか、ここの天井にまで肌さむいこだまとならずにいなかった。それと大庭をめぐる外曲輪そとぐるわの林の外を、折々、霜のうごくような兵の刀槍がチラチラ通る。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ようやく草原を魚貫ぎょかんして、ややたいらな途へ出た時には、武甲山の裏へ廻ったので、今まで高いと思っていた連山は、ことごとく下になり遠く山脈やまなみの彼方に浅間のけむりを見出した時は思わず高いと叫んだ
武甲山に登る (新字新仮名) / 河井酔茗(著)
碧色というから遠い山だろう、遠く遠く、重畳ちょうじょう山脈やまなみが重なっている、その山脈を
初夜 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
私は雲を見る 私はとほい山脈やまなみを見る
優しき歌 Ⅰ・Ⅱ (新字旧仮名) / 立原道造(著)
うねうねと連らなる山脈やまなみ
天の海 (新字新仮名) / 今野大力(著)
その山脈やまなみもれんめんと
春の来る頃 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
今こそ覺むれ、山脈やまなみ
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
右に横たふ山脈やまなみ
哀音 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
戌亥いぬゐに亙る山脈やまなみ
筑波ねのほとり (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
一里ばかりもその山を登ると、その奥がいくらかだらだら下りになって、道は山の中腹をいく曲りもいく曲りも……右手に深い谷を隔てて、層々として深い山脈やまなみが走っています。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
とうに宿は出はずれてしまい、どっちを見ても曠野こうや山脈やまなみ、森と林との世界となった。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あな遠し遠き山脈やまなみ、あな高し高き山脈やまなみ、立ちとまり見れども消えず、目ふたぎて傷めど尽きず、目翳まかげして遥けみ見れば、いや寂し薄きの虹、また見ればさらに彼方に、いや高き連山つらやまの雪
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
父母と別れてから四五日は、ともし頃になると悲しそうで、独り庭へ出ていっては、涙の溜った眼でじっと遠い山脈やまなみを見ていたりした。寝床のなかで微かにむせび泣いている声も二三ど聞いた。
菊屋敷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
空に光つた山脈やまなみ
降っていた雨もこの時あがり、東の空の山脈やまなみの上へ、暁が水色を産み出した。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
上つ毛の加牟良かむらの北にあまそそる妙義荒船、はろばろと眺めにれば、この日暮ふりさけ見れば、いや遠し遠き山脈やまなみ、いや高し高き山脈、いやがに空に続きて、いや寒くひだを重ねて、幾重ね、幾たたなは
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
上つ毛の加牟良かむらの北にあまそそる妙義荒船、はろばろと眺めにれば、この日暮ふりさけ見れば、いや遠し、遠き山脈やまなみ、いや高し高き山脈やまなみ、いやがに空に続きて、いや寒くひだを重ねて、幾重ね、幾たたなは
興安嶺越えつつぞ思ふこの山やまさしく大き大き山脈やまなみ
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
青垣山あをがきやま山脈やまなみ
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)