“婢(こしもと)” の例文
七八人(しちはちにん)群(むらがり)飮(の)むに、各(おの/\)妻(つま)を帶(たい)して並(なら)び坐(ざ)して睦(むつま)じきこと限(かぎり)なし。更(かう)闌(た)けて皆(みな)分(わか)れ散(ち)る時(とき)、令史(れいし)が妻(つま)も馬(うま)に乘(の)る。婢(こしもと)は又(また)其(その)甕(かめ)に乘(の)りけるが心着(こゝろづ)いて叫(さけ)んで曰(いは)く、甕(かめ)の中(なか)に人(ひと)あり。と。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
其(そ)の夜(よ)令史(れいし)、堂前(だうぜん)の幕(まく)の中(なか)に潛伏(せんぷく)して待(ま)つ。二更(にかう)に至(いた)りて、妻(つま)例(れい)の如(ごと)く出(い)でむとして、フト婢(こしもと)に問(と)うて曰(いは)く、何(なに)を以(も)つて此(こ)のあたりに生(いき)たる人(ひと)の氣(き)あるや。これを我(わ)が國(くに)にては人臭(ひとくさ)いぞと云(い)ふ議(こと)なり。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
婢(こしもと)をして帚(はうき)に燭(ひとも)し炬(たいまつ)の如(ごと)くにして偏(あまね)く見(み)せしむ。令史(れいし)慌(あわ)て惑(まど)ひて、傍(かたはら)にあり合(あ)ふ大(おほい)なる甕(かめ)の中(なか)に匐隱(はひかく)れぬ。須臾(しばらく)して妻(つま)はや馬(うま)に乘(の)りてゆらりと手綱(たづな)を掻繰(かいく)るに、帚(はうき)は燃(も)したり、婢(こしもと)の乘(の)るべきものなし。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)