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婢
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こしもと
七八人群飮むに、
各妻を
帶して
並び
坐して
睦じきこと
限なし。
更闌けて
皆分れ
散る
時、
令史が
妻も
馬に
乘る。
婢は
又其甕に
乘りけるが
心着いて
叫んで
曰く、
甕の
中に
人あり。と。
其の
夜令史、
堂前の
幕の
中に
潛伏して
待つ。
二更に
至りて、
妻例の
如く
出でむとして、フト
婢に
問うて
曰く、
何を
以つて
此のあたりに
生たる
人の
氣あるや。これを
我が
國にては
人臭いぞと
云ふ
議なり。
婢をして
帚に
燭し
炬の
如くにして
偏く
見せしむ。
令史慌て
惑ひて、
傍にあり
合ふ
大なる
甕の
中に
匐隱れぬ。
須臾して
妻はや
馬に
乘りてゆらりと
手綱を
掻繰るに、
帚は
燃したり、
婢の
乘るべきものなし。